結果としてコミック原作作品3日連続鑑賞となった。この3作はそれぞれアプローチが違って面白い。「累」では役者を思い切りフィーチャーし、「愛しのアイリーン」では脚本を練り込んで世界を構築、そして本作「響」ではキャラクターオリエンテッド。
もともと原作が、モンスター響がメインとなって物語をドライブするキャラクター主体の青春群像劇であり、そういう意味では主役の平手友梨奈が、眼力といい無表情さといい淡々とした台詞回しといい、実に鮎喰響そのもので、映画への没入感は十二分だった。暴力性もね。
ただ、その分キャラクターに頼り過ぎで、文芸部員を絞り込んだことや、フルネームでのデビューなど、展開を進めるためのみにとった弥縫策の連続って印象が強い。突如バケモノを放り込まれた社会の混乱という、スケール感・練り込み感はいまひとつ。
大人達の配置も悪くないんだが、既存の作家たちとの邂逅エピソードを省きすぎたため、もう一つのテーマである「才能」への向き合い方は上辺に流れて終わってしまったね。せめて祖父江秋人（こいつはバケモノ感が無さすぎるミスキャストだったが）や文壇大御所系との直接対決シーンとかを作るべきだったんじゃないか。
バケモノは飼いならされるべきではないし、芸術家やアスリートに、過剰に人格者であることを要求する昨今の風潮へのアンチテーゼまで突き詰めてもいいと、個人的には思った。
原作が連載中でもあり、どこまで映画化するのかと思ったが、「第一部完」という締め方で、エンディングのカタルシスも余韻も感じられないが、まあこれしかないのかもしれないね。続編を願うよ。
余談だが、劇中登場する書籍・POP等の装丁・デザインがダサすぎるのは興ざめ。はっきり言って原作の絵のレベルは高くない。制作側は映像のプロとして、そこに意地を込めて完成度の高い画面を作って欲しかった。
