小

響 -HIBIKI-の小のレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
3.7
観る直前に、自分より年上の映画好きのオジサンの「観なければよかった」という酷評を聞いたうえで鑑賞。

15歳の天才女子高生小説家・鮎喰響が、その圧倒的な才能を武器に、社会の常識とぶつかりながら自分の気持ちを誤魔化さずに真っすぐに進み、その様を見せつけることによって、彼女に接した人の目を覚ましていく物語。

響は、自らの信念を貫くために人間関係のなあなあな部分に決して妥協しない、面倒くさいヤツなのだけれど、彼女の言動に初めのうちは「なんだ、コイツ」と頭にきても、心を奪われない人はいない彼女の小説を読むと、彼女に影響を受けないわけにはいられない。

ある種のヒーロー像を描いていると思うけれど、その天才性が具体的にはわかりにくいうえ、自意識むき出しのキャラクターにそれ程でも…と思った。

しかしそう思うのは、自分がオジサンであることもさることながら、さまざまに多様で異質な生活形態や価値観をもった人びとが隣り合って暮らしいてる今の時代にあって、物理的に一人では生活できない「ムラ社会」の作法、即ち同質性を前提とする共同体の作法に引きずられているからかもしれない。(『友達幻想』菅野仁・著)

現代のヒーローは、共同体に入り込んだ異質なもの(例えば怪獣)を排除して同質性を保つ者(例えばウルトラマン)から、自分が異質であることを主張し、それを認めさせることができる者へと代わってきている気がする。

<1975年以降の飽和社会、豊かさ頭打ちの中で生まれ育った世代。この世代の特徴は、「自分の気持ち至上主義」です。><いまの自分の気持ちを一番大切にしたい。その気持ちを貫くことが信念であり、その気持ちを失うことが挫折である。「自由」こそが最も重要な価値だと教育を受けた世代なのです。>

<視点を変えると、「自分の気持ち至上主義」とは、その時その瞬間の自分の気持ちを肯定する生き方です。好きな人がいたけど、別の人を好きになってしまった。このとき、自分の気持ちに正直に生きることを『善』とする生き方なのです。><もう付き合っている人がいるから新しい人を好きになってはいけない、とは思わない。どっちの人を「本当に」好きなんだろうかと考えることが、私たちの誠実さなのです。>
(『フロン』岡田斗司夫・著)

『善』は自分の気持ちに正直に生きることであり、それを実現できる人こそヒーローであると。『南瓜とマヨネーズ』のツチダも、『寝ても覚めても』の朝子も、そして『あみこ』も…って、みんな女性ばかりですね。なんかわかる気がする。

●物語(50%×3.5):1.75
・好きじゃないけれど否定しない、自分的にはそんなヒーローの物語。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・「欅坂46」の平手友梨奈さんの演技、結構良かったかも。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・映像、美しいかも。
小