さむ

億男のさむのレビュー・感想・評価

億男(2018年製作の映画)
5.0
#佐藤健 #高橋一生
一男というストーリーテラーを通して、九十九という男の孤独が描かれている。

一男が日常的に食べる牛丼の並。
牛丼の並が美味しいのは、その上に、上や特上があるからだ。

十和子、百瀬、千住、万左子…。
名前の中に十進法の数字がつく人物たちが例外なく金に翻弄された人生を送っている中で、一男と九十九は、あくまでも「一」と「九」という「個体」であり続ける。

九十九がモロッコ旅行で一男を助けるために使った金。
他者との距離感が発声の仕方に如実に表れる吃音。
流暢に喋ることの意味。

電車での一男と九十九のシーン。
九十九が品川駅で降りた理由。それは、落語「芝浜」を知る人ならば説明するまでもない。

靴にしのばせた札は、今の九十九にとってどんな重みを持つのだろう。

地球上のどこかで日々の幸せを感じながら生きていてほしいと願う、高橋一生版・古河九十九だった。


(3回目鑑賞後)↓
金が必要な幸せもあれば金が不要な幸せもある。幸せと金を切り離して考えれば靴の中に隠す程度の金があれば十分。足元を見られるのは生きていく上では不可避。時に宝飾品としての靴に美酒を入れて飲むのも人生には必要だ。そして片足となる相棒がいればなお心強い。
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