トリ

未来のミライのトリのネタバレレビュー・内容・結末

未来のミライ(2018年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

『時かけ』から12年、年々ケモナーであることを堂々と作中に出している細田守監督待望の最新作。前作が伏線回収などの点において不完全燃焼だったために期待を込めて鑑賞。
が、これは細田守監督シリーズ史上かなりの”問題作“。



問題点が複数あったため、このレビューではその中から特に気になったものをいくつかピックアップしていく。

・世界観に合わないゴチャゴチャした設定
『サマーウォーズ』や『バケモノの子』では早い段階で非日常的な様子を出すことでこの作品はファンタジーなのだとその世界観に違和感なく入れるのだが、今作の場合、冒頭はずっと子育てに奮闘している家族の生々しいほどリアルな日常を描いており、リアルな日常を描き切った後に非日常的な世界が展開するので、庭に行くと飼い犬が擬人化したりファミリーツリーの話やタイムスリップ要素を出されてもいきなり過ぎて世界観について行けない。


・作画が残念
序盤、祖母とくんちゃんで
「お片付けしましょうか」
「うん!」
「1人で出来る?」
「うん!」
「じゃあ片付けてね」
「うん!」
という会話があるのだが、「うん!」と大きな声で発音しているのにくんちゃんの口が動いていない。実際には口を閉じて発音出来るのは承知しているが、アニメの場合は最低限の動き(ここでは首を縦に動かす動作)がないと声だけが聞こえるという状態になり、非常に違和感がある。画面奥のモブキャラならまだしも、画面内に2人しかいないカット(しかもくんちゃんの方が手前)でこれは良いのだろうか。

※『となりのトトロ』でカンタの「ん!」と言いながら傘を差し出すシーンは、首を上げる動作があるため上記のような違和感は生まれていない。

また、こちらは作画が雑ということではないのだが、本作の制作環境によって生まれた問題も存在する。オープニングでは今作に関わった様々な制作会社の名前がクレジットされており、今作が大規模な作品であることがわかるが、その中にあるどこかの制作チームが細田守作品の作画と噛み合っていない。物語終盤、東京駅で遺失物センターのロボットに質問責めに遭うシーンがあるのだが、そのシーンの作画があまりにも他のシーンと違い過ぎて鑑賞中細田守作品を観ているのかわからなくなる。


・ターゲット層はどこ?
この作品、音と絵によるビックリ系の演出が何度か登場する。大人でもビックリするということは当たり前だが劇場内の子供が泣いてしまう事態が発生してしまった。また、中盤には巨大なエンジンのようなものが画面奥から迫ってくるカットがあるのだが、嫌がらせなのかと思うくらい作画が凝ってるため、それが何かわからない子供にしてみればグロテスクな物体が轟音を鳴らして近づいてくるのだからトラウマになるのではないだろうか。”血の繋がっている兄妹が世代を越えた冒険を経て家族になる“というファミリー向けなテーマにしては演出がおかしいため、一体誰向けの作品なんだろうか。

--------------------------------

結局、本作は想像力豊かな子供の夢物語なのだろうか?劇中くんちゃん以外の力で物が動くシーンがあるので妄想ではないのだろうが、冒頭からリアルな日常を描いたところに非日常な設定を持ってこられても物語について行けない。
それと鑑賞中ずっと気になっていたのが、庭にある大きな木が世代を繋ぐタイムマシンであるかのように描かれているのだが、私の記憶違いでなければ曽祖父の代からあの木があったという描写は無かったはずだ。それなのに何故くんちゃんは曽祖父と触れ合えたのだろうか? 家系図(ファミリーツリー)と実際の木をかけて描きたいのであれば、植えてからじっと家族のことを見守っていたとかそういった設定にした方がわかりやすいし、
それなら序盤に祖母と母親に
「ここ本当変な間取りよね、あの木切ったりしないのかい?」
「駄目よ、この木はひいじいじの頃からずっと生えている大切な木じゃない。だからあえて切らない間取りにしてもらったの」
みたいな会話を入れれば掴みとしてバッチリじゃないだろうか。




長々と書いてしまったが、結論を言うと本作はプラネタリウムの特別上映として流れるのであれば許されるだろうが、映画館で1800円を払って観るには厳しいものがあると感じた。
トリ

トリ