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未来のミライのKUBOのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.8
冒頭、独特のメロディで山下達郎の主題歌が流れ出すと、それだけでワクワク!

7月6本目の試写会は、細田守監督最新作「未来のミライ」。

Filmarks でも評価が分かれているようだけど、要するに登場人物のどこにも感情移入できない年齢層があることがポイントなんだろう。

父母の愛情たっぷりで育ってきた「くんちゃん」に妹ができた。お母さんは生まれたばかりの妹「未来」ちゃんにかかりきりだ。当然くんちゃんはおもしろくない。「やだ、やだ、やだ!」「好きくない!」とダダをこねまくるが以前と違ってチヤホヤしてもらえない。

子育てをしている層、子育てを経験してきた層には、この辺のやりとりはいわゆるあるあるネタ。こんな時代があったな〜と懐かしく見られる。

お父さんの星野源、お母さんの麻生久美子、ついでにひいじいじ役の福山雅治など、絵も台詞も全て当て書きとしか思えないそのまんま感! アニメにする必要ないくらいそのまんま(^^)。

ダダをこねまくるくんちゃんの前に現れた「未来のミライ」ちゃんの登場は単なるタイムスリップにとどまらず、お父さん、お母さん、じいじ、ばあば、ひいじいじと「くんちゃん」へと続く一族の記憶を辿る壮大な旅となる。

細田守50歳、神山健治51歳。かつて若手のホープと謳われた世代も家族を持ち親となる年齢を超えた。そんな彼らが「親目線」で子育てと子供ながらの自立を描くようになるのは当然のことではあるが、本作ではアニメを見る中心層である中高生の目線がないために彼らに訴えるものがないのではないだろうか。

そう言った意味では、本作のストライクなターゲットは子育てをしている、または通過した親世代。かつての子育てを懐かしみ、曽祖父・曽祖母、祖父・祖母、父・母から子へと連綿と続く家族というものが、ほんの小さな偶然の連なりで出来ていると実感できる世代には、心に重く訴えかけてくるものがあるだろう。

「サマーウォーズ」を撮っていた細田守も、ここまで大人目線の作品を撮るようになったか、と思うと時間の流れも感じる。大ヒット作にはならなくても、ハートウォーミングな秀作だと思う。

(個人的に、我が家では次男誕生の折、長男がヤキモチを焼かないように常にパパが長男と手を繋ぐようにした。幸いなことに、我が家では「パパ、好きくない!」とは言われなかったので、パパとママの分業は思いのほか上手くいった。今は「未来のミライ」ちゃんよりも大きく育った我が子だが、あの頃くれた一番幸せな時間は決して忘れない)

(19日より毎夏恒例の宮古島暮らしに入るので試写会通信はほぼ1ヶ月中断。8月下旬までレヴューは日本最南端の映画館「よしもと南の島パニパニシネマ」での上映作品と旧作のみになりま〜す)
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