小一郎

未来のミライの小一郎のレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.3
細田守監督作品って、何故か公開時に観て記憶がすっかり薄れている『サマーウォーズ』と、マモ案件(娘がファンの声優の宮野真守さん出演作)の『バケモノの子』を観たくらい。

異次元で強大な敵と戦いつつ、家族の感動を描く感じなのかしら。個人的には前者の方が印象に残っていて、後者の方はあまり覚えていない。『バケモノの子』のフィルマークスの自分の感想を見ると、子ども向け映画だと思ったようだ。

んで、本作は時空を行き来しながら物語が展開するけれど、ヤバめの敵はおらず派手な対決はないからガッツリ家族ドラマとしてジーンとするのかと思いきや、さっぱりノレず。

①わがまま言わず我慢しようね、②お父さん、お母さんだけでなく、天国にいるおじいちゃん、おばあちゃんを忘れないでいようね、③兄妹は仲良くしようね--というようなことを子どもを諭すようにして描いているように思った。前回観た作品同様、やっぱり子ども向けからしら、と。

監督はもっと深いことを言っていて、自分がわからないだけだろうと思いググってみると長めのインタビュー記事を発見した。
(https://style.nikkei.com/article/DGXMZO31272730R00C18A6000000?channel=DF280120166614)

ほうほう、ネタ元は監督自身の子どもたちですか。それで言いたいことはというと、未来は混沌としていて<自分のときはこうしたといったアドバイスや、経験主義的なことが何も言えな>いから、子どもたちには<未来に向けてしっかり生きていってほしい。自分たちが育った社会状況と変わってしまったのでアドバイスできない僕たちは、そう思うしかないですよね>。

<僕らは今、複雑な思いを抱きながら子育てしているけれども、そんな親の気持ちなんか関係なく、子どもたちはバイタリティーをもって、どんな時代であっても切り拓いていってほしい。大人が思い描くどんよりした未来ではなくて、子どもは子どもたち自身の未来を自分の手でつかむだろう、つかんでいくに決まっている。そんないきいきした生命力を表現したいのです>。

つまり親である自分たちは頼りにならないから、子どもたちは自らの<いきいきした生命力>で<自身の未来を自分の手でつか>んでくれるよね、きっと、ということらしい。

それで親が教えるようなことを、くんちゃんが時空を飛び越え勝手に学び、成長しちゃったわけね。<主人公を4歳の男の子にしたのは、映画史的にもこれまでにあまりない大きなチャレンジだと思ったからです>というけれど、少年少女の成長物語はたくさんあっても、さすがに4歳児はナシでしょ。だからこそ<大きなチャレンジ>なのだろうけれど、個人的にはくんちゃんの親は何やってんだって話ですよ。

親はなくとも子は育つというけれど、それは実の親以外の関係が親代わりになって子どもを育てるというのが社会の暗黙の了解みたいなものだから。本作では「現在」の親は、このままいったらグレるんじゃね、というのは大げさかもしれないけれど、くんちゃんを育てることの気配りが足りない。

しかし「現在」の親代わりとなるのが「過去」や「未来」の家族ということで、<過去から続いてきた歴史のバトンを次の世代に手渡すイメージ、人間の生と死の循環、家族の大きなサイクルみたいなものをエンタテインメントとして味わっていただけるような作品になっていると思います>ってことらしい。この壮大な狙いが全くわかりませんでした、スイマセン。

それにしても何故4歳児を描くことで、<子どもは子どもたち自身の未来を自分の手でつかむだろう、つかんでいくに決まっている。そんないきいきした生命力を表現>できると思ったのかといえば、<そもそもこの年齢の子どもたちは、社会常識が邪魔しないから、人間のプリミティブな本質に近い存在>だかららしい。

でも社会常識に邪魔されない姿が「人間のプリミティブな本質」に近い存在というのは素朴過ぎない? そもそも「人間のプリミティブな本質」って何? 個人的には4歳児は「人間のプリミティブな本質」というよりも「生命の本質」に近い感じではないかと。だってさ、人間って社会関係を持つことで、後天的に“人間”になっていくと思うから。

という自分の意見はさておき、私の理解・妄想によれば監督が言うところの「人間のプリミティブな本質」とは生命維持以上の欲望を持ちうるということで、それがワガママで攻撃的な態度に現れるし、上手くいけば<いきいきした生命力>につながるのだろうと思う。

こういう点については、4歳児を主人公としなくても、描いている作品がいくらでもある。だから本作から感じた子どもを諭すようなメッセージは大人も身につまされることではある。

しかし、大人の場合、我慢しろとか、先祖を大切にしろとか、そんなことは十分承知しているけれど、それができないから悩み、葛藤するのであって、だからこそ共感するドラマが生まれるのだろうと思う。「嫉妬」という言葉を知らない4歳児で「人間のプリミティブな本質」を描いても、単なる赤ちゃんがえりを超えることはかなり難しく、本作がそれに成功しているとは…。

ということで細田監督の世界観にノレない気がしてきて、こういうことを合わないというのかしら、と思った映画。

●物語(50%×2.5):1.25
・部分的には良くても、構成というかまとまりが良くないよね。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・未来の東京駅とはやっぱり良い。くんちゃんの声はちょっと~だった。

●画、音、音楽(20%×5.0):1.00
・やっぱり画のクオリティは最高。山下達郎、久々に聞いた。