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未来のミライのSIのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
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2018.8.28
TOHO日比谷にて鑑賞

下馬評の低さに怯えつつ、あまりに酷かったら途中で出ようと思っていたが、最後まで見れたし途中何度か泣いた。
手放しでは褒められないが、今作をきっかけに細田監督の潮目が変わるのは納得できない。

確かに脚本はあまりにお粗末で、ファンタジーの大前提である「保たれた嘘のレベル」を勝手に上げ下げするために観客は常に展開に置いていかれる。
主人公くんちゃんの白昼夢は、あるシーンでは唐突に先祖の過去を追体験する夢であり、あるシーンでは現実にも影響を及ぼしてしまう論理不明な謎の何かである。
この子供の白昼夢というもので思いつくのは宮崎駿が手掛けた『ハイジ』のなかのハイジが夢遊病になってしまう話だが、これはハイジがアルプスに帰りたさすぎるためというもっともな理由があった。
しかし今作の展開の中心といえるこの白昼夢は、完全に背景が無くしかもその嘘のレベルも勝手に上下するために多くの観客を苛立たせるのだろう。

そもそも鑑賞の印象として、これはオムニバスであり寓話集である。
一つ一つの小話はどれも寓話的(=教育的)であり、他者への想像力を豊かにするよう子供に諭す。しかしその話の一つ一つに家族以外の繋がりが無いためにまとまりがなくて、映画全体としての一本の筋も無い。
これは映画ではなくテレビアニメでやるべきだったのではないだろうか?(勿論ワンクールもつとは思えないが)

もっとも、この映画のなかで細田監督が示した表現への野心は評価すべきだと思う。

冒頭の吐息で窓ガラスが曇る表現は面白かったし、幼稚園児や赤ちゃんの動きはあの独特の重みを感じさせ流石と思わせるものがあった。
なんてことないカットにもCGを使っていて、2Dセルと3Dの融合をそこにみた。
また未来の東京駅の描写は表された異世界のなかで一番よかった。細田監督はSFに活路を見出すべきようにまで感じた。

背景が素晴らしく綺麗なのも印象的。

論理的なストーリーを求める大人は皆辛口だろうが、子供はどう感じるのだろうか。
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