川田章吾

未来のミライの川田章吾のレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.0
毎回スコアをカウントしながら思うのだがフィルマークスの平均スコアは、結構、自分のスコアに近いものがある場合が多いな。今回の『未来のミライ』は正直かなり評価が悪い。そして自分自身の評価もとても悪かった。

そもそも細田守監督と自分の相性が悪くて、『バケモノの子』も『おおかみこどもの雨と雪』もあまり評価は高くない。
『サマーウォーズ』は前評判ほどよくなくて、『時をかける少女』はまあまあ良かった程度。アニメとしてクオリティは高いのかもしれないけど、演出の仕方や物語の運び方が正直言って雑で毎回ストーリーに入り込めない。

今回の作品はその中でも物語の展開が極端に下手で、これはエンターテインメントではなく前衛的なアートとして見ようと割り切っていた。
ただ、評価ポイントがないわけでもなくて、私自身いま3歳の子どもを育てている中で、4歳児の子ならあるよなあ、と納得してしまう表現の機微は頷くところ多数。
また、くんちゃんの内面の描写のシーンの絵は結構好きだった。

ただ、くんちゃんの声…。宇多丸さんは評価してたけど、4歳児の子どもをあんなにリアルに描いているのにあの表現は、一貫していない。身体の伴うストレートな表現について、こっちに忖度させているようじゃダメです。

また、物語の運びで言うと、つねにくんちゃんの内面を中心に描かれすぎている。
普通、内面は外部の障害とそれを克服しようとする行動との葛藤で生じる。それは子どもでも同じ。『となりのトトロ』だって、内面はこう変化したなんてわざわざ描かない。
わざわざ描くセカイ系の新海誠監督だって、もう少し現実の世界の事件と絡ませている。
もちろん、子どもは内面と外面の区別がつかないという理屈はあるのかもしれないけど、内面で全て解決しないでしょ。子どもも現実の世界でもがきながら、折り合いをつけてます。
それは子どものイマジネーションを過信しすぎじゃないのかな?
やはり、ジブリの子どもの描き方の方がリアルだと思う。

アニメーションの技術的なことは勉強不足で評価はできないけれど、物語の展開や演出の仕方では、細田守監督の悪いところが出た感じにしか見えない。
芸術としては成功しているかわからんけど、エンターテインメントとしては完全に失敗してると思います。
川田章吾

川田章吾