shibamike

15時17分、パリ行きのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

あかりをつけましょ ぼんぼりに♪
お花をあげましょ 桃の花♪
五人ばやしの 笛太鼓♪
今日はたのしい ひな祭り♪

綾瀬千早を始めとする、瑞沢高校 競技かるた部員やクイーンらの成長を描く本作。主人公ちはやを広瀬すずが瑞々しく演じ、高校生の青春をスクリーン一杯に映す。
あれ…?これ、「ちはやふる」じゃん。
間違えた!「15時17分、パリ行き」だ。

先日のTBSラジオ「たまむすび」で映画評論家 町山智浩さんがこの映画の話をしていた。
2015年に実際にあった事件(タリス銃乱射事件)がベースの本作(恥ずかしながら、自分はこの事件を知らなかった)。我々観客がこの映画でまず驚くのは、主演の3人や乗客、撃たれた男性、地元の救急隊員、警官に本物の当事者(一般人)を使っているところであろう。こういう試みって、史上初?(ではないらしい、映画の歴史的に何作かあるとのこと)
事実を物語にする映画というのは絵本の昔話と似ていると思う。当事者以外が事件を想像し(桃太郎とかこぶとりじいさんとか)、読み聞かせる。映画においても俳優達が当事者の気持ちや考えを想像して演技する。しかし、事件の本人達をそのまま使うとなると、事情が変わってくる。想像よりも「思い出す」作業になる。思い出せない部分が想像になったりして、味わいがありそうだ。「あのとき、自分はどうしてこういう行動をしたのだろう?」。人間の行動なんて理解不能であることが大半だと思う。

製作陣営も盛り上がったことであろう。「主役の3人も乗客も本人使っちゃおっか(笑)ガハハ!」「もうー勘弁してくださいよー、マジで無理ント・イーストウッド(笑)」ってな具合に。
犯人役もご本人だったら、もう訳がわかんない。「スクープ!全員ご本人!!」とかね。おやめなさい!

町山さんの話で印象的だったのが、クリント・イーストウッド監督の撮影ペースが速いという話。何年かに1本のペースで映画を作る映画監督が多い中、クリント・イーストウッド監督は1年で2本映画を作ったりと、かなりペースが速い。「そら、西部の早撃ちガンマンやからやろ。」と自分は思ったが、そうではないらしい。
色々理由があるらしいが興味深かったのは以下の2点。1点目は「演技のデティールにこだわり過ぎない」こと。アメリカン・スナイパーという映画で、男性が赤ん坊を抱いているシーンがあるのだが、赤ん坊が明らかに人形と丸わかりなんである。その真意は「細けぇこたぁいいんだよ。」ということらしい。これが本当ならちょっと素敵だなと思う。そもそも映画って、観客の妄想・想像が面白くする面もあると思う。今回の主演3人に本人を使うというのも、演技的にはあり得ないのかもしれないが、真実を1番知っている人達が演じるということで、映画に迫力が出るというのは想像に難くない。実際、映画は全く破綻していなかったと思う。こういうデティールにこだわり過ぎない(一方でリアリティにこだわり過ぎてる気がする)というスタンスが撮影スピードをスムーズにしているらしい。

もう1点が「照明をほとんど使わない」こと。自分は映画を作ったことも無いし、撮影現場に立ち会ったこともないので全く知らないが、映画撮影において「照明」というのはメチャクチャ重要らしい。良い感じの光を当てるのに、あーだこーだ時間を掛けて調節し、何度もセッティングし直す大変な作業とのこと。クリント・イーストウッド監督はこの七面倒臭い照明準備をしないらしいのである。自然光とか部屋の照明で済ませるということだろう。何でそんなに重要な照明無しで映画が撮影できるのか?というとカメラマンが元々照明担当だった人らしく、技術が高いので上手いことやれるらしい。と言うわけで「面倒な照明準備が無い」ので撮影スピードが加速するという訳であった。

「映画、照明」というキーワードを聞くと自分はフジテレビで以前放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「食わず嫌い王決定戦」にて女優 広瀬すずが「どうして生まれてから大人になったとき、照明さんになろうと思ったんだろう。」と発言したことを思い出す(冒頭のちはやふるはこれのため?自分の粘着気質にも程がある。二十歳そこそこの娘さんの発言にムキになるオッサン)。照明って大変で重要な仕事なんじゃん!

少年時代のシーンにて3人がサバイバルゲームでモデルガンを撃ち合う。アメリカでサバイバルゲームってできるんだ!と当然のように驚いてしまった。何か遠くから見かけた人が「武装している人がいる!」とか言って、ゲーム敷地内とか関係なく本物の銃で撃ってきそう。

成人した彼らがムキムキになりすぎており、ちょっと面白かった。

クライマックスの列車内でのテロリストとの対決シーンはラスト10分くらいでサクっと終えてしまう。テロリストとの緊迫した攻防に肝を冷やす映画ではない。それよりも「何故、彼らはああいった極限状況で勇気を奮い起こすことができたのか?」に焦点を当てていると思った。少年時代、いじめられていたから?米軍で鍛えていたから?じゃあ、いじめられて軍人になれば全員、捨て身で行動するのか?分からない。じゃあ、何でなの?その疑問に対して、「その人達の人生追っかけてみたら、そのヒント分かるんじゃないですかね?」と言われているような気がした。結局、わかんなかったけど。

フランス大統領も最後のスピーチで「行動するべきだ」と熱弁を奮っていた。
今の時代だからこそ行動が必要という訳ではないと思う。いつの時代にもどんな人にも行動は必要なはずだ。そして、行動には色々な行動があると思う。本作の行動は常人には中々真似できない英雄的行動である。
事件発生時、列車内で発砲音を聞いた乗務員は乗務員室に逃げ込み、施錠していたらしい。褒められたものではないだろうけど、一般的な行動だと思う。そりゃ怖いよ。

テロリストに主人公の男性が飛び掛かるシーンで、テロリストが主人公にライフルを向けて一発引きがねを引く。が、不発(不発なんである!)。この不発のためにテロリストはコテンパンにボコられる。飛び掛かった主人公はこの瞬間がトラウマにならなかったのであろうか。自分はこの不発の瞬間が1番怖かった。命を懸けた賭けに主人公が勝って、テロリストが敗れた。
大量虐殺が起こらなくて本当に良かった。撃たれた男性は助かったのであろうか?と疑問に思ったが、演じているのがご本人というのを思い出してズッコケた。本人が撃たれたシーンの再現とかよくやるよな。普通トラウマだよ!
海外旅行に行くの、また腰が重くなってしまった。平和が1番!
アムステルダムではあんな乱痴気パーティーが本当に行われており、自分のような黄色いチンチクリンが行ってもポールダンスさせてもらえるのであろうか。

普段、人が大勢いる場所(電車とか映画館とか)で、たまに「今、テロリストが襲撃してきたら…」とか想像してどう行動すべきかをシミュレーションしては無惨に殺される結末ばかりの自分であるが、本作で何か参考になれば、とか期待したりもしていたが、特に実務的な何かは得られなかった。死んだと思って突撃するしか無さそうだ。自分の場合だと絶対、ライフルが不発とかなく、キッチリ脳天に銃弾をぶちこまれること必至である。南無。

とりあえずヨーロッパ観光のシーンは観ていてダルかった。
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