あをによし

15時17分、パリ行きのあをによしのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.8
実話ものが続くイーストウッドだが、今回は遂にそれを本人たち主演でやるという、もはや映画って何なんだ、という本質をも考えさせられる設定でぶつけてきた。
前作の『ハドソン川の奇跡』もそうだったように、脚色次第でいくらでも感動させられるストーリーを、過度に劇的なものとしてでなく、ひたすら実直に描くというスタンスは今作も変わっていない。しかし、そこはイーストウッド、子供時代の回想やバカンスのシーンも織り交ぜながら、上手く映画としてのバランスをとっている。
特に子供時代の描写は秀逸で、物語の主題をクライマックスへと繋ぐ役割を担うと同時に、ストレンジャーシングスでも観ているような楽しさがある。フランス、イスラム系テロリスト、アメリカ軍、銃規制問題など、色々な視点からこの映画を捉えられるだろうし、実際、イーストウッドの政治的なスタンスというのは賛同できることばかりではない。ただ、そこに囚われすぎると、この映画の本質からは離れるばかりだ。
子供時代落ちこぼれだった、ヨーロッパでのバカンスで羽目を外すどこにでもいそうな3人組が(内2人は軍人ではあるけれど)、星野源が「ドラえもん」で歌っているように“何者でもなくても世界を救”う。ドラえもんが、のび太とスネ夫とジャイアンの物語であるように、これはスペンサー、アレク、アンソニーの物語以上のものでもなければ以下のものでもない。そこがこの映画の素晴らしさだ。次は、ドラえもんを観よう。
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