TakaCine

15時17分、パリ行きのTakaCineのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.8
【英雄行動は特別なもの!?】
危険な状況で、なぜ彼らはあのような行動が出来たのでしょうか?

イーストウッド監督が描きたかったのは、偉人の英雄譚ではなく、ごく普通に暮らす人々が成し遂げた英雄行動でした。

当事者のインタビューでの言葉
「あの瞬間のために、生きてきた気がする」

あの瞬間、高速列車タリスに居合わせたのは偶然ではなく、必然だったのかもしれない。そう思えた理由は…

⚠️ここから先はネタバレしているので、鑑賞予定の方は鑑賞後にお読み下さいね😉

〈ごく普通の若者たちの物語〉
実は観るかどうか悩んでいました。イーストウッド監督最新作なので鑑賞予定にしていましたが、蓋を開ければ…まさかの賛否両論😓エッ!!

2015年8月21日に起きたタリス銃乱射事件。銃で武装したテロ犯と、それに立ち向かった3人の若者たち。この設定だけで、自ずと感動的な映画に出来そうですね😉!

しかし、映画的エンターテイメントを求めると後悔します。

本作は、リアルを追及した「実際の当事者が演じる再現ドラマ」だからです。過剰な演出、演技、音楽は極力排除して、列車タリス内での撮影と自然光、3人の若者たち、負傷した人、居合わせた列車の乗客、駆け付けた地元の救急隊員や警察官など…本人を呼び寄せて事件を完全再現。どこまでも本物志向です。

虚構を嫌い、リアルな当事者の感情や記憶のみで勝負する世界。これはロベール・ブレッソン監督の手法ですね。

ただ、これ以上ないリアル感は発揮されますが、ドラマ映画としての一般的な面白さ(娯楽性、起承転結、カタルシス)は薄れました。そこが評価が分かれるところでしょうね。

主役3人は演技経験が無いにも関わらず、かなり自然に本人を演じていたのには驚きました。

映画の構成として、少年から青年へと成長する若者たちの日常と交流、無邪気なヨーロッパ観光地巡り、高速列車タリス内で遭遇する事件に分かれます。

ちょっと不満だったのが「ヨーロッパ観光地巡り」パートが長くて飽きてしまったこと😌💦普通の若者らしさはよく伝わりましたが、事件と直接関連がないので延々撮されても…😌(困)イルノカ?

旅行先で出会う女の子は可愛かったけど😁♪

彼らが普通の若者たちだったことは、しっかり心に刻まれました。

〈運命に導かれる人生〉
淡々とした若者たちの日常生活が終わり、あの戦慄の瞬間に遭遇します。ここからが真骨頂。2回目の「WiFi inside」を見た時から、さすがに悪寒が走りました。そして逃げ惑う乗客。

大惨事になるところを、彼らのお陰で、1人の死者も出なかったのはもはや奇跡としか言えません(乗客554名)。

スペンサー・ストーン
アレク・スカラトス
アンソニー・サドラー
※演じたのは本人たち
※原作は彼らとジェフリー・E・ スターンの共著

この3人の若者たちが幼馴染として成長し、(まるで)あの瞬間のために必要な人生を歩んでいく姿を、映画の殆どの時間を費やして解き明かしていきます。

ジグソーパズルのように必要なピース(経験)を徐々に手に入れていく姿は、運命に導かれているかのようでした。

3人とも幼少の頃を見ると、優等生というよりは何回も校長室に呼ばれるタイプの問題児で、校長室に呼ばれるうちに友達になった感じでした😌イタズラをしたり、サバイバルゲームを興じたりする普通の男の子たち。

成長と共に固い友情に結ばれた3人だからこそ、テロの恐怖に怯むことなく、協力しながら勇気ある行動を実行出来たのでしょう!

予告編を見た時から、ライフル銃を持つ犯人に立ち向かっていくスペンサーの姿がずっと気になってました😓

理性では、あんな行動はまず出来ません。

立ち向かった時、何を考えていたかを彼に聞いても「何も」という答え(驚)。

間違いなく幸運でした。結果、誰1人犠牲にならなかったのですから。彼らがあの場に居たから助かった多数の命。それこそが運命‼️

彼らの人生は一見、栄光よりも、思い通りにならない挫折や悩みに満ちた険しい人生のようでした。

そんな哀しい気持ちを持っている故の、常に心の中にあった他者への「思い遣り」や「役立ちたい気持ち」。

クラブで羽目を外して『ハングオーバー!』みたくなったり、自撮り棒で旅行先の写真を撮りまくる普通の若者たちが、あの瞬間、乗客を助ける英雄になったのです。

「大きな目的に向けて、自分が動かされると感じたことは?」

子供時代と(事件が起きる)大人時代を織り交ぜながら描くことで、私たちは彼らの人生の1つ1つの選択が、自分を守り人を救うための必須要素だったことを思い知ります。軍隊の訓練、救命処置、防衛手段、銃の取り扱い…

人生に無駄なことは何もなかった。

〈イーストウッドの実験〉
初めから結論が分かっている話など面白くはありません。

でも必然のような奇跡がなぜ起きたのか?を"作為性"を取り払って描いた先に何が見えるのでしょう?

そんな実験を今回、イーストウッド監督は試した気がします。87歳の挑戦に頭が下がります。

装飾をなくした本作(説明を省きすぎて物足りない時がありました)に、僕には人間のチャレンジ精神と優しさが見えました。どんなに挫折しても諦めず、目の前に困っている人間がいたら助ける。そして支える仲間がいる。

そんな素直な彼らだから、あの瞬間、奇跡的に助かったのかなとも思えましたね😆

そう感じたのは、演技ではないリアルな彼らの人間性が滲み出ていたから。ラスト近くの授賞式と凱旋パレードを見た時、彼らが祝福される姿に「よくやったね!」と感動してしまいました(実際の映像と撮影映像をミックスした感じがウディ・アレンの『カメレオンマン』。素晴らしい映像マジック)。

普通の若者たちが示した勇気ある行動。イーストウッド監督は、そんな彼らの生き方から何か学べるものがあるよ!と言っている気がしました。

強いメッセージ性溢れる実験映画でした。