薪

15時17分、パリ行きの薪のレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.3
俳優が素人だからか、とにかく人物がよく動く。訓練シーンでは寝坊させたり無理矢理アラームを鳴らしてまで動きを創出しようとする。こうした行動が扉を閉める動作でカットされるといった一貫性も良い。
ところが、全体としてかなり歪な印象だ。例えば前半の、意地悪な学校描写のテンプレ感や湿っぽいシーンにそれらしくかかる劇伴(弦やピアノの単音のメロディ)に伴うどことないウェルメイド感、それとは対照的な観光シーン。ここでの観光シーンを映画的な飛躍/破綻として純粋に喜べないのは、どうもこのギャップがイーストウッドが志向してやっているのかが不明だからで、もちろん自分自身も彼の映画はほとんど後追いで見ていて偉そうなことは言えないが、なんとなくイーストウッドが本当に100%関わっているのかわからなくなる。ラストの実際の映像と作った映像の疑似的な切り返しも映画的な興奮を狙った演出とは言い難い。巷で言われているドン・シーゲルへの回帰=原点への回帰というのも本当か?と思ってしまう。
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