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15時17分、パリ行きのsacoのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.7
確かに前半中盤、退屈な流れなのだが終盤のクライマックスに、よりインパクトを持たせる為には、実に効果的な構成だったと私は思う。
単に3人の生い立ちを淡々と見せているようでも(ちょっと睡魔にも襲われるが....)、そこは御大、細やかなエピソードを巧妙に自然な形で織り込んで、事件の瞬間、3人がとった行動にそのことによって必然性を持たせ観客を納得させる感じ。
事件のシーンは、音楽で煽ることを一切せず、その場で発せられる音をリアルに再現して、その臨場感がすごく怖かった。
それまで静の中で平穏な日常を体感していたところで、そのタイミング、自然に感情がせり上がってきて、胸が詰まり思わず涙していた。
ラスト30分の演出は息を呑むほど秀逸だった。
イーストウッド監督作品は、今まで一貫して宗教に寄り添うことに疑問を投げかけるような描き方をしてきたと思う。けど、今回は寛容に受け止めるような描き方になっていたなぁと感じた。監督もその年齢になり心境の変化があったのかしらとも思う。
実話を扱った作品だとよく最後に本人の紹介があたったりして興ざめする事もあるが、3人とも本人だったので、ニュース映像などが違和感なくそのままの流れで良かったと思う。
87歳になっても新しいことに挑戦するイーストウッドは凄いし、作品のクオリティは下がってないと思った。
イーストウッドが76歳の時のドキュメンタリーで見たインタビューで「....同じことをやるのは気がひける。....広がらなければ縮んでしまう。」というような意味のことを答えていたのを思い出す。
年齢に関係なく、決して守りに入らないイーストウッド作品、だからこそ、いつまでも新鮮な驚きと感動を得られるのかもしれない。
妥協せず、無駄なシーンなど一切ない、何度も噛み締められる内容の作品作りに徹するクリント・イーストウッド。カッコいい!!ほんと、カッコいいです。
願わくは、100歳までも、映画を撮り続けて欲しい。。。と思うのは、あまりに欲張りだろうか。
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