このレビューはネタバレを含みます
なるべく無駄なものを削ぎ落としたあっさり塩味の映画。
当事者本人が俳優として出演するというこのチャレンジングな試み自体は素晴らしいと思ったし、それを気づかないぐらいのシナリオ設定。ただ、いかんせん盛り上がりが…。起伏がなさすぎることへの退屈さを感じるのはイーストウッド偏差値がまだまだだからなのかな。
子供時代のシーンは演出もありつつすごくいい関係性の3人とシングルマザーの苦悩を表現していていい。フラッシュバック的に列車のシーンが出てくるのも見せ方の技術力の高さが伺えるし、やっぱり演出力があるなと思わされる。
それだけに旅行シーンが超絶つまらない。何だろうリアリティを追求しすぎているけらいがあるためかすごく退屈な男旅を見せられる。微妙な喧嘩とかあるあるだけど行程こなしてる感もなければ盛り上がるポイントもない。出会い的なのもフワッとあるだけで。本人たちだから脚色つけづらいんだろうけれども若干冗長だなと思ってしまった。
さりげない一言が事件につながってるというセリフの演出はさすがイーストウッドという感じがしたし、人を救いたいと言い続けた主人公が人を救ったあとのいかんともしがたい表情もショットとしてすごく焼き付いた。表情の切り出し方がやっぱすごいなと思う。
エンドロール前の国家に表彰されるシーンでの実際の報道映像とのつなぎこみも新しさがあった上、繋ぎ目がわからなくなるぐらいのリアリズム探求は圧巻のものを感じた。