キャッチ30

15時17分、パリ行きのキャッチ30のレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.0
素人俳優を使った映画はある。『自転車泥棒』はその代表格だ。今作でも主要キャストにプロの俳優はいない。然も、実際の事件の当事者だという。イーストウッドはこの実験的手法に踏み込んでいる。

元ネタは2015年に発生した「タリス銃乱射事件」だ。この事件の犯人に挑んだ三人の若者の物語だ。彼らはこの事件で英雄となった。

しかし、イーストウッドの意図は英雄の美談ではなく、事件発生までの普通の若者たちの人間らしさだ。学校には上手く馴染めなかった三人が出会い、大人になって、二人は人の役に立ちたいと軍隊に入隊し、一人は大学生活を送っている。離れていても繋がっている彼らはヨーロッパ旅行を計画する。

イーストウッドはシンプルな物語の構造に伏線を潜ませている。サバイバルゲームや柔術、応急処置がその例だ。
何より御年87歳の名監督が若々しい映画を作っているのに驚きだ。重厚な物語を想像している人には肩透かしを喰らうかもしれない。