つかれぐま

15時17分、パリ行きのつかれぐまのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
4.0
彼らに会いたい。

斬新な(悪く言えば歪な)作品だが、見終えるとこの3人のことを、彼らの母親も含めて好きでたまらなくなる。これがなにより本作が傑作たる証左だ。

二度目の鑑賞で改めて思ったのが、あらゆる経験が必ずどこかで役に立つという伏線の見事さ。一見するとドキュメンタリー風でありながら、(賛否両論ある)欧州ボンクラ旅行も含めすべてがクライマックスにつながる構成は映画的だ。3人の素人演技には確かに問題あるかもしれない(私はそこまで酷いとは思わないが)。が、あのクライマックスの緊迫感や迫力は、どんな名優でも及ばないだろう。その一点だけでも本人出演の意義は十分だと思った。

ところで気になるのはアメリカでの評価の低さだ。例えば「パシフィックリム:アップライジング」よりも低評価なのには悪意すら感じる。3人の演技力や右傾表現を問題視したことも少なくないだろうが、私が思うに「クチよりも実際に行動できることが大事」という本作の力強いメッセージが、アメリカのクチだけリベラル層には「痛いところ突いてきやがって」という受け入れがたいものになってしまったからではないだろうか?もしそうだとすれば、本作の完成度は極めて高いと言える。

犯人側の事情には一切触れず、主人公たちは犯人の頭に向けて引金を引く。犯罪は社会が悪いからではない。犯罪者が悪いだけだというダーティーハリー的思想は健在だった。そういうスピリットは変えることなく、映画作家としては新しい挑戦を続ける80代。とにかく凄い人だ。