『ハドソン川の奇跡』と対をなす一篇で、地味に見えて尖ったことをやってるイーストウッド監督はやっぱり凄い。
『ハドソン川の奇跡』は事故が起きた後の話に絞り、英雄の苦悩を描く『許されざる者』や『父親たちの星条旗』の系譜で、まさにイーストウッドっぽい作品でした。
それが、この作品だと、今度は事故が起きる前に絞るという、まったく逆のアプローチ。なので、なぜこの描写?とちょっと困惑と退屈もしつつ、最初は観ていました。
ただ、なんだかんだで巧いのは、ただヴェネツィアで観光してるのを見せてるだけじゃないんですよね(笑)
ところどころで、神の視点のごとく、「運命に導かれている」「すべては必然」という主題をしっかり抑えてきてる。
人々にとって大きな事件があったとき、当たり前といえば当たり前だが、「その前」も「その後」も、同じ線上にあるんですよね。
人生の奥深さを感じさせられる、そんな映画でした。