マヒロ

15時17分、パリ行きのマヒロのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.5
『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』と、アメリカ市民の中から現れた英雄を描いてきたイーストウッドが、偶然居合わせた電車でのテロ行為を防いだ3人のアメリカ人の若者を描いた作品。ただ一味違うのが、主役の3人含め、同じくテロに遭遇した一部の人々を役者でもなんでもない本人がそのまま演じているというところで、地味だけどかなりチャレンジングなことをやっている。

単にクライマックスになるテロのシーンだけを描くのではなく、三人の幼少期の出会いの場面からじっくり時間をかけて描いていく。途中まではここまで昔の話必要かなと思っていたんだけど、彼らがテロの時に命をかけてまで行動するに至った理由が、幼い頃に感じていたこと・体験したことから何となく読み取れるようになっていて、その伏線張りの旨さとさり気なさが流石だなと思った。
さりげないと言えば、肝心のテロもかなりあっさりとしたもので、しかしそのあっさり具合がまたリアルで怖かった。エモーショナルな演出はほぼ排除されているのに、ここまで引き込まれてしまうのはすごい。

わざわざ演技素人の本人を起用し、更にその人となりまで含めて映画にしたのは、どんな立場の人であっても大きな出来事に巻き込まれることはあるし、鑑賞している人だって、今現在もその運命に向かって少しずつ伏線が撒かれている状態なのかもよ、というイーストウッドからのメッセージなのではないか…と勝手に思った。

(2019.8)
マヒロ

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