このレビューはネタバレを含みます
2015年、アムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリス車内で銃乱射事件が起きた。たまたま居合わせたアメリカ人旅行者3人の働きにより、大量殺人とならずに済んだが、彼らがなぜそのような行動に出られたのか。本人たちが事件についての本を出版し、それを読んだクリント・イーストウッドが映画化。
実際に3人が本人役を演じて話題となった作品だが、演出により、全く素人に見えなかった。それまで米軍にいたり、学生だったりした人たちだが、役者らしいたたずまいがそれぞれにあるので確かに適役だったと思う。
人物像を描くのにかなり時間が割かれており、咄嗟の行動の背景を子供の頃の3人の関係性から丹念に描いている。ヒーローではない、普通の人たちがテロに遭遇したときどう動くか。咄嗟の際に、培ってきたものが出てしまうから、そういう意味では、たまたま軍で訓練を受けてきた屈強な若者たちが乗り合わせていて他の乗客はラッキーだっとしか言いようがない。
ベルリンのサイクリングガイドのセリフ、ヒトラー自決の歴史考証、ヨーロッパとは内容の異なるアメリカをさりげなく強烈に風刺。テンポ良く、あっという間にエンディングを迎えた。勇敢に闘った彼らに、心からの拍手を。