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ナショナル・シアター・ライヴ 2018 「ジュリアス・シーザー」のtaruponのレビュー・感想・評価

4.0
とにかく、ものすごく斬新な演出!
アリーナ部分の客席を取り払い、アリーナ部分にいれた客はローマ市民に見立てられ進行する。舞台はその場面によりアリーナ部の中央に下からせり出したりして作られる。衣装も現代、キャシアスやキャスカ、ディーシアスは女性、ロックバンドの演奏からスタートする。

同じ脚本でできているはずなのに、以前見た蜷川版とは同じものとは思えないくらいに印象が違った。
どちらも良さがあるけれど、私はジュリアス・シーザーに関して言えば、今回のものの方が面白かったかも。
きっとこれは演じるのは大変なんだろうなと思うくらいに、特にキャシアス、ブルータス、アントニーはセリフ量がすごく1人で演説したり、延々と主張したりという場面が多いのだけれど、とにかく言葉によって相手を説得するということが政治においていかに重要であるか、そして大衆はその巧みな言葉の言い回しでいかようにも立場を変え迎合するものなのかということを、今回の演出の方がより身につまされて実感したように思う。設定はローマのままだけれど、衣装、小道具は現代ということで、妙に現実とリンクし、感情移入とまではいかないものの心情的に近い気持ちを起こさせるものだった。

ブルータス役のベン・ウイショー、以前ホロウクラウンのリチャードⅡ世で見た時もすごく心惹かれるものがあったのだけれど、今回のブルータス役もすてきでした。
まじめで誠実で正義感を持ち、それが裏目裏目にでて悲劇となる役にぴったり。
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