Aya

ナショナル・シアター・ライヴ 2018 「ジュリアス・シーザー」のAyaのレビュー・感想・評価

3.8
#twcn

とにかく凄かった。

シェイクスピアにあまり興味のない(トムヒごめん!)私からすると、1週間1日1回と結構腰が重い案件をわざわざ大阪まで見に来たのは、もちろんウィショさん出てるからなんですね。

全くなにも知らずに行ったので、いきなり劇場と思しきアリーナの隅っこのステージでのUKロックバンドのライブから始まります。

え?
なに?
おまけ?

と思ったら解説の人がこれはアリーナの観客もローマ市民として参加する演劇なんですよー!と説明してくれました。

えーすげえどんなの?!
てかどこが舞台??
と思ったら

舞台は上に下に右に左に狭めたり広げたり動くんですね!!

ちなみにバンドはごくごく普通でした!
ダサくもなく凄えいい!ってわけでもなく本当に普通!!

アリーナの立ち見席で、スーパーのカートに入ったSMLと分けられた舞台のTシャツ売ってるおじさんを見て、マジなんや・・・と思いましたw

そして始まる

シーザー帰還→カシアス、ブルータスをたぶらかす→ブルータスその気になる→仲間を募ってシーザー殺す→お葬式→内戦→みんな死ぬ

という一連の流れをもうそれはそれはドラスティックに舞台装置を駆使した演出、導線、演者の動きでこれでもか!と劇場中を引っ張っていきます。

これアリーナで見てる人めっちゃ面白いと思うんですよ。自分のすぐ脇を役者さんがすり抜け、小道具を手に掲げ、なんやったら自分も一緒に声もあげる。

しかもこれだけ装置を動かすので、肝心のアリーナにはスタンディングでもそんなにお客さん入れられないし、ここのシアター2階席もすげえ少ないから、どんなチケットの価格帯か知らないですけど、絶対儲かってないと思うんですよこの劇!!

チャ、チャレンジ・・・非常に演劇に対する、シェイクスピアに対する真面目な姿勢が見えます。

時々マイクの音が途切れたりはしたのですがほぼトラブルもない形で約2時間の舞台は幕を閉じます。

舞台が動く、ということで、大道具は大変やと思うのですが、そんなに派手なわけでもなく、時代設定も曖昧でみんな無印で買ったアウターです、みたいな普通の服着てるのもなかなか面白い。

音響や照明演出がめちゃくちゃ効いてるのも大きいと思う。
最初にバンドの演奏があったと言いましたが、そのバンドのメンバーがそのまま劇に加わっていたり、劇中に楽器を弾く演出があったり、音響効果が全部ロックサウンドなんですね。

だからビジョンとしてきちんとした設計があるんやと思いました。
シェイクスピアの「シーザー」という、話自体は超内輪揉めだけど、巻き込まれるローマ市民、という大きいのが小さいのかわからないこの話となかなか相性がいいな、と。

ウィショさんのスーツ姿やメガネ姿、そして腰に銃!!という珍しいものが見れたのもファンとしてはグッとくるあたりで。

私はウィショさんの舞台を見たことがないけれど(てか舞台自体をほぼ見たことがない)いや凄いなぁ、、、あんなに観客が間近にいても揺るがないブルータス・・・改めるまでもなく素晴らしい役者さんだと思いました。

他の皆さんも素晴らしい!
あの飄々としたおじいちゃんのシーザーから、なんやねん裏切り者アントニー、勇ましいオクタヴィアス、そして全ての黒幕カシアスに、茶目っ気たっぷりのキャスカ、そしてその位置めさなりたいんですけど!!!と懇願してやまないブルータスの妻、ポーシャ。

みなさん憎々しく、志高そうに見えて、言ってることとやってること違うやん!というシェイクスピアらしいツッコミ所満点の人間らしさはやはり映画より生々しく感じました。
Aya

Aya