horahuki

悪魔の奴隷のhorahukiのレビュー・感想・評価

悪魔の奴隷(2017年製作の映画)
4.0
素晴らしいリメイク!!
大筋はオリジナルの『夜霧のジョギジョギモンスター』を踏襲しつつも、テーマを現代風に改めるとともに、設定の変更により閉塞感を強烈に演出している。

オリジナルでは、生者も死者も信仰により救われるということを根底に置いてましたが、本作ではその信仰すら役に立たないものだとして切り捨て、生者を救うのは家族の絆であり、人との繋がりだということを強調しています。

家族の不在が悪魔に付け入る隙を与えるという展開もそうですが、お互いに全てわかってるようでその奥底まではあまり理解できていないという家族内部の繋がりについてまでさりげなく言及してるのも現代的。序盤の鈴の音を怖がる子供なんてのも象徴的ですね。

そして設定の方でも改変がなされていて、オリジナルでは金持ち一家だったのが、母親の治療費のために、自宅を抵当に入れて借入をしなければ生活もままならないほどの貧困家庭に変更されている。これにより、実生活面での息苦しさを増大させ、逃げたくても逃げられないという環境を無理なく成立させ、また、貧困が家族を分断するという問題も描いているし、それがテーマに直結してるのがうまい。

恐怖演出も素晴らしいものが非常に多い。音が大きめのびっくり箱演出ではありますが、音だけに頼った従来のものとは違い、ビジュアルや怪異の見せ方に非常に強いこだわりを感じる画作りが素晴らしく、音と映像の両方のポテンシャルを引き出し完璧にミックスさせている。それにより、音が映像を映像が音をそれぞれ引き立て、素晴らしい相乗効果を生んでいる。この監督は抜群にうまいです。中には失敗してるものもありますが、それ以上にうまいものが多すぎる。

ただ、クライマックスの展開の粗さとラストの尻すぼみ感。そして、説明不足過ぎてイマイチ腑に落ちない状態で終焉を迎えるので、終盤までの素晴らしい演出が勿体無いな〜というのが心残り。もう少し整合性のある説明を残してくれたら、傑作になり得た作品なだけに本当に惜しい。そして、クライマックスのまさかな展開も物語としては面白いのですが、そちらに引っ張られ過ぎたように感じました。ここら辺はオリジナルに分があるかな〜と思います。でも、ここら辺は再鑑賞して確かめたいところがあるので、その時にスコア変えるかもしれません。

とはいえ、この監督は今後も要注目なのは間違いないです。本作のジョコアンワル監督はインドネシアホラーを牽引してるらしいのですが、世界的に見てもトップクラスのホラー作家だと思います!過去作の日本版が一切発売されてないのが本当に疑問。早く発売してください!めっちゃ見たいので、マジでお願いします!
horahuki

horahuki