ShinichiMiki

人魚の眠る家のShinichiMikiのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
3.8
試写会にて。

原作既読。当選して嬉しい反面、この作品のレビューを書くことになる難しさに憂慮。

脳死というテーマを扱い、「人の死は肉体の死か脳の死か」という誰にも答えの出せない問いをあえて真正面から問いかける内容。

泣けるとか泣けないとかではなく、観た人それぞれに考えてもらう事が最大の目的ではないかと感じた作品。まぁそれでもやっぱり泣きたいんだけど。

原作を読み、映画化の話を知りとても楽しみにしていた。この話、要となる主演が最も重要でキャスティングで成否が決まると言って過言ではないと思う。

篠原涼子と知って、原作の薫子は弱さ脆さが強く出ているように感じていたので、篠原涼子はその強いイメージからう〜んどうだろう石田ゆり子とかがいいのでは、、と思っていたけど結論からいうと素晴らしかった。

だんだんと常軌を逸して周りと感覚がズレていき、狂気ともいえる状態になっていく母親を見事に体現していた。脇を固めるキャストも完全にハマっていた。個人的には松坂慶子の祖母役が本当に素晴らしく悔恨のシーンでは泣けた。

時にホラーにも感じてくる演出や、まさに海の中の人魚を連想させる雨の効果的な使い方など、映画ならではの見せ方が良かった。

2時間に収めるための原作での細かな部分をばっさりカットしているのもテンポ良く観られて良い。

ただ警官を巻き込んでのクライマックスのシーンでは若干お涙頂戴感が強くて、逆に泣けず。その後に訪れる最後のシーンをもっと盛り上げてくれた方が良かったかも。

とは言えさすがは松竹。重いテーマの骨太な原作を見事に映画化した良作だと感じた。でもこの作品、ネタバレせずに書くの難しいんだよなぁ。