Shirorin

人魚の眠る家のShirorinのネタバレレビュー・内容・結末

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

何をもって「死」とするか。
脳の停止?心臓の停止?
日本では、心臓の停止が「死」であり、「脳死」は判定をしなければわからないという。
延命措置か、臓器提供か…
重く、難しく、辛いテーマでした。

タイトル通り、魚のウロコのような青い瓦屋根が印象的な、見事なローズガーデンのある大きなお庭のある素敵な一軒家に住む家族のお話。

会社社長播磨(西島秀俊)と妻(篠原涼子)。2人の子供のうち、1人が脳死状態に。臓器提供をしようとしたその時、娘の手が動き、撤回。播磨の会社の最先端技術により、娘を電気で動かし、健康状態を保つ。
娘は成長していくが、いつまでこれは続くのか…?最後にはどうなるのか…?

同じ母親として、子供がこういう状態になったら、なかなか諦めることができず、いろんなものにすがりたくなる気持ちは分かる。けれど、笑顔まで作り出した時、夫、祖母(松坂慶子)が驚きで固まっていたように、これは行き過ぎだ。神の領域に踏み込んでしまった、と思った。

娘が生き返るはずもないのに、姪っ子たちがはしゃいで走り回る姿を羨ましそうに見つめて欲望をエスカレートさせたり、娘を公園や学校にまで連れて行って、周りの人にも娘は生きているかのように話したり、母親(篠原涼子)のどんどん狂気を帯びていく様が凄くて、恐怖でしかなかった。そのせいで学校で虐められる息子が可哀想だった。

一体この物語はどんな結末を迎えるのだろう、娘の行く末は?とずっと思いながらの鑑賞だった。

娘は生きているのか、死んでいるのか?
誰も判断がつけられなくなり、警官の前で娘を殺そうとする。自分が殺人罪で裁かれるなら、娘は生きていたというお墨付きをもらえる。そうまでして、娘が生きていると認めて欲しかった…。

最後にはあんな夢オチ的な演出は好みではないけれど、きちんとお別れができて、臓器提供もできて良かった。

臓器提供した側、された側の家があんな近いか?とか、誰からもらったかは教えてもらえないんじゃないの?と思ったが、人魚がいたあの素敵な一軒家は、泡ぶくのように消えていた…という終わり方は好きでした。

松坂慶子や、子役の演技にも泣かされ、見終わった後もいろいろ考えさせられ、余韻がなかなか引かない作品でした。
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