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人魚の眠る家のnamのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.1
「2児の母である篠原涼子さんの熱演に涙」

原作は未読です。ストーリーとしてはとても単純で予告でもあるような脳死した娘をどうするかというお話で何か大きな事件が起きる類の話ではないのですが、そんな狭い限られた世界の中での周りの人々の心情の描き方がとても秀逸でした。

まず娘がプール事故による脳死で植物状態になってしまったは母親の絶望。そして死を認めたくないという想い。そしてかすかな希望をかなりのリアリティを持って演じ上げています。実際に2児の母でもある篠原涼子さんは撮影中に泣かなくてもいいシーンでさえ涙をこらえる事ができなかったというくらい感情がこもっており、観ている側の心も動かされます。

母親が目覚めない娘のためにどれだけ尽くしたかというのが家の美術に反映されています。カレンダーの飾り付けや自宅介護のために細かく勉強したであろうノートやファイルの付箋など細かい所でしっかりと母親の愛情や看護の苦労を描いているのが見事です!

そして徐々に狂気を帯びてくる様子も決して誇張ではなく、あくまでリアリティの延長線上として描かれているのが見事でした。

そしてそれを取り巻く周辺の人々たちもまた素晴らしい。父親の西島秀俊さんは別居もしていた事もあり母親よりは1歩引いた立場にいるが、自身会社の技術によって娘を助けようとするが、途中まで同じ方向を向いているかのように見せつつも、その距離感ゆえ妻の異変にも気づいてしまう。

他にも純粋に力になりたいと手を貸す研究者の坂口健太郎さんや事故の責任を感じ罪の意識を感じている祖母の松坂慶子さん等周りのひと人々にも感情移入できるような構成はとても素晴らしいです!個人的には松坂慶子さんの内心を語るシーンでまず泣いてしまいました。

人の命や死というテーマを扱いつつ、家族の絆の再生という側面もあるヒューマンドラマでした。子どもはいない私ですがお子さんがいる方が観たらより感情移入してしまうのではないかと思います。おススメです!
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