自分的には泣くというより怒る映画だった。怒りの対象は大きく2つ。①本音と建て前を使い分ける世間とそれに同調する夫、②娘の生死を自分たちが決めるというやるせない状況。
プールで溺れ、意識不明のまま回復の見込みがないと診断された娘の瑞穂。事故がなければ娘のお受験後、離婚の予定だった夫の和昌と妻の薫子は、ある決意をする。
①について。一見、娘のための行動しているように見える和昌だけれど、善良で良識ある市民としての立ち振る舞いの域を出ず、誰が何と言おうと断固として子どもを愛するという雰囲気がない。そこを見逃さない薫子に「あなたは泥をかぶらない」とバッサリ斬られ、自分もギャー、みたいな。
②について。日本では医師が脳死であろうと判断した状態を「臨床的脳死」というらしいけれど、法的に脳死と認められるためには「法的脳死判定」行う必要があり、それには臓器提供が前提となる。つまり臓器提供をしなければ、娘は心臓が止まるまで生きていることになる半面、臓器提供を申し出れば親が娘の死を決めることにつながる。
瑞穂なら臓器提供を望みそうだと薫子は思うけれど、死を決めることにどうしても納得がいかない。果たして薫子は自分の気持ちに折り合いをつけることができるのだろうか…。
という重いテーマが、自分的にはファンタジーっぽい気もしてしまった最先端技術、いくらなんでも感なヤマ場でのある人物の告白、わからなくないけどお約束的な薫子が納得する理由、やっぱり愛って大事だよね的若い男女、当たり前のようにベタベタな医師の一言とラストなど、拡散気味な部分やちょっとどうかな思うような部分を包み込んで、考えさせる物語にしていると思う。
それにしても臓器提供しないと「法的脳死判定」をしてくれないという制度って、他国も同じなのかな? 自分的にはこの点が驚きで、疑問だった。臓器提供にかかわらず、求めに応じて「法的脳死判定」してくれても良いと思うのだけれど変かな? 本作はこの点にもかなり怒っていた気がするのだけれど、違うかな?
●物語(50%×3.5):1.75
・重い話テーマで、考えさせられる部分もあったけれど、ドラマチックな小ネタが多くて、ちょっと食傷気味。
●演技、演出(30%×4.0):1.20
・篠原涼子さんの「こわっ」て感じ、嫌いじゃない。
●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・冒頭の方、ワンカットでヌルヌル動く映像だったと思うけれど、どういう狙いなのかな?