がぼ

人魚の眠る家のがぼのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.1
(2018年11月鑑賞)
観終わった後にはどっと疲れが出て、後味は決して良くない映画ではあったけど、この作品が傑作だと言える理由が3つ。

一つ目は、映画の前の部分になってしまうけど、やはり原作のもつテーマやストーリーそのものが人々を惹きつける。「脳死は人の死にあたるのか」というずっと議論されてきた問題を、この時代に改めて表に出し物語にする。脳死は生物学上どうすることもできないけど、それ以外の技術が発達し、まるで生きているかように生かし続けることが可能になりつつある現代。それが本当に正しいことなのかどうなのか。「脳死」の議論が盛んに行われていた少し前の時代とはまた違う問題に直面しているんだなと気づかされた。普遍的なテーマの中で、時代の変化とともに生じる新たな問題。その鋭い着眼点で重厚なヒューマンミステリーとして作品にしてしまう東野圭吾はやはり怪物だ!

二つ目は、娘を愛するがゆえに徐々に狂気に囚われていく母・薫子を演じた篠原涼子がすごい。『SUNNY』が比較的最近の映画で、この役とのギャップもあるからなおさらだった。どんどんおかしくなっていく薫子は映画の中では異常者のように描かれているけど、観客としては、彼女の狂気の中にある母としての強さと脆さをしっかり感じとるから、ずっと彼女の味方でいたくなる。母は強いだけじゃない、不安や弱さを見せる篠原さんの演技に本当に泣かされる。

三つ目は、やはり篠原さんをはじめとする俳優陣たちの極限の芝居を引き出し、これだけ難しい作品を映像化した堤幸彦監督の手腕が素晴らしい。『天空の蜂』のときもそうだったけど、笑いなんて一切ない、こんなに社会派で重みのある映画を撮るんだと今回も懲りずに衝撃を受ける。この映画に関しては「こんな感じで始まるんだ」って、正直最初からびっくりした部分もある。薫子と眠り続ける娘が住む家が、本当に深海にある神秘的な場所のようにずっと見えていたし、それはこの映画のテーマでもある人間の領域をこえた部分に踏み込んでいるっていうイメージそのものだなっていう感じもした。「TRICK」「SPEC」と同じ監督とは思えない…いろんなジャンルの映画を撮れる数少ない…唯一の監督さんなんじゃないかと思う。

疲れても、後味悪くても、「おもしろかった」「泣けた」だけでは終わらない、これは受け止めなくてはならない現実なんだと教えてくれる映画だった。