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人魚の眠る家のellieのレビュー・感想・評価

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
3.8
これは予告編の作り方の失敗かな、と思う。東野圭吾だし、おどろおどろしい雰囲気の予告だしで、何かの科学系サスペンスかなと誤解して当時は観る気が起きなかったのだけど、実はかなりリアルとも言えるヒューマンタッチの映画で、それなりに観る価値があったように感じる。

脳死と判定された娘を生きていると信じて介護し続ける母、離婚間近の父の苦悩、息子の混乱と孤独。もう少し自分が若かったら主人公やその周辺の人の気持ちがいまいちよくわからなかったかもしれないけれど、各々の心理描写がなかなか丁寧で、何より、日々の介護の様子がとても詳しく描かれているところに、さすがの堤幸彦監督の手腕が光る。

母の思いが暴走して少しずつ狂ってゆく篠原涼子の演技も良かった。子供の臓器提供や人としての尊厳をいかに守るかについて、途中でさしはさまれるある人の素晴らしい台詞に涙が出た。

人が人を思う気持ち、一転してエゴと向き合えない人の弱さといった生きる命題を監督の目線で深く掘り下げていて、それなりに良質の映画に仕上がっている。
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