スガシュウヘイ

人魚の眠る家のスガシュウヘイのネタバレレビュー・内容・結末

人魚の眠る家(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

私もまさに6歳と5歳の娘がいるので、ガンガン響いちゃったなぁ。

ただ私の場合、映画を見て、何かを「考える」のって好きじゃないのよ。どこからが「死」なのか、なんて難しいことは結局よく分からない。

それより、本作は単純に「映画」として非常に面白いと断言する。


まず、「人魚」を取り巻く家族その他の人間関係の設定が、ことごとく成功している。

この家族に「弟」がいたことが、新たな視点を作っているし、「母の妹家族」の存在も微妙な距離感でいい。作品に深みを与える人物たちだ。

また夫婦仲ももともと良くはなかったところに、坂口健太郎が介入していくことで、不思議な緊張感を生む。
え?これって恋愛に発展すんのかな?っていう変なハラハラだ。坂口健太郎と恋人とのすれ違いも含め、この辺は見てて楽しい。


そうかと思えば、ホラーさながらの演出も光っている。
雨音鳴り響く、青の強い部屋。眠り続ける人魚が、反射反応により、川栄に向かってしっかりと腕を上げた、、!
このシーン好きだなぁ。ギュスターヴ・モローの象徴主義絵画のような芸術的ホラー。

西島秀俊からのプレゼントをもらった人魚は、BMI技術によって笑顔を作らされる、、。
まるで傀儡人形、、。
そして篠原は満面の笑み、、。
こ、こ、こわい。
西島秀俊が、この技術の致命的な欠点を実感した瞬間だわね。
血の気失せるよ、これは。


「脳死」という重いテーマをここまで見やすい作品に落とし込めるってすごい。

エンドロールでは、「人魚の眠る家」がぽっかりなくなった空き地を、空撮したショットが流れる。
それはまるで臓器を抜かれた人間のような街だった。

堤幸彦監督に拍手。


公開:2018年
原作:東野圭吾
監督:堤幸彦(『トリック』『ケイゾク』)
脚本:篠崎絵里子
出演:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎