sanbon

ドラゴンボール超 ブロリーのsanbonのレビュー・感想・評価

3.7
え、内容がほぼ無い…。

なんじゃこりゃ、こんなスッカスカなストーリーで1時間30分以上ある映画作ったの?

マジか…それ、めっちゃくちゃスゲーーじゃねえか!

オラ、ワクワクすっぞ!!

という事で、劇場版第20作目という記念すべき作品の今作。

ストーリーは「復活のF」同様、原作者「鳥山明」が脚本を担当しているが、パラレルを正史に組み込んで正史がパラレルになってしまったのか、悟空とベジータのフュージョンが(しかもポタラ無しで)今回初めてになっていたり、ブロリーとも今回はじめましてになっていたり、過去に自分が作り上げてきた歴史(ブロリーは違うにしても)にセルフ改変を施し、当のご本家が二次創作のようなお仕事をしていらっしゃった。

また、冒頭にも述べたように物語と呼べる物語は劇中の1/3程度しかなく、いかに悟空とベジータをブロリーにぶつけるかという所にのみ注力された脚本となっており、本当に必要最低限の展開しか用意されていない。

が、それがとんでもない熱量のバトルシーンの布石であるなら文句などあるまい。

劇場公開時から神作画と噂には聞いていたが、これはマジで凄いな。

ディズニーやピクサーなど海外資本のアニメは早々に手描きアニメから撤退し、今やアニメーションといえばCGが全盛である。

というか、昨今ディズニーなどは更にそこから一歩先を行くように、今度は名作アニメ実写化計画を着々と遂行していっており、時代の流れを肌で感じる程映像表現の進化の波は凄まじい事になっている。

日本でも、ポリゴンピクチュアズを筆頭に全編3DCG作画という手法の作品もどんどんと増えていっているし、その勢いは留まることを知らない。(ちなみに、僕はこの3DCGアニメが死ぬほど嫌いである)

だが、そんな映像技術の進歩が顕著になった現代だからこそ「手描き」の価値は再認識されるべきであり、今作はそのモチベーションが画面から溢れ出んばかりに体現された、まさにアニメーターの意地と執念の化身とも思える壮絶な作品となっていた。

まず、今作で悟空とベジータとブロリーがなにをしてるかというと、ただバチボコに殴って蹴って投げ飛ばしているだけなのだが、この戦略もクソもないど直球パワープレイをとんでもないバリエーションを以って描き分けているのが凄い。

攻撃のパターンも各超サイヤ人形態毎にちゃんと変わるし、ここまで手描きの良さを伝えてきたが「超サイヤ人ゴッド超サイヤ人」形態では、手法がCGに切り替わったり、本当にありとあらゆる手段を講じて画面上で同じ構図の絵が続かないように細心の注意を払いつつ、それでいてダイナミックに様々な工夫が施されている。

それは、恐らくこの作品一本の中に作画技術のノウハウがほとんど網羅されてるんじゃないかと思う程で、最小限しかない内容に反して技術量は半端なく詰め込まれていた。

これを100分ある上映時間の60分以上ひたすら繰り返すのだから、もはや正気の沙汰とは思えない。

今作は、言ってしまえばただそれだけの、それだけを楽しむ映画なのだが、他の全てをかなぐり捨てて、その一点にのみ集中したストロングスタイルな作風は、よほど作画技術に自信がないととても怖くて普通は製作に踏み切れないだろう。

それをこの作品は、どれだけの労力かは計り知れないが見事にやってのけ、十二分に満足できるクオリティにまで押し上げており、スタッフ陣の作品への愛と意地と信念と熱量がギュウギュウに詰め込まれた、とんでもない「逸品」としての完成度を誇っていた。

この作品に野暮な詮索は一切不要だ。

頭からっぽにして夢を詰め込もう。
sanbon

sanbon