唯

あなたに降る夢の唯のレビュー・感想・評価

あなたに降る夢(1994年製作の映画)
1.5
チャーリーは根っからの善人で、故に奥さんをどんどん付け上がらせて自分はうんざりしているタイプ。だから、自分に向けられる優しさが欲しかったんだろうね。

イヴォンヌは、苦労をして来た分、人に優しく出来るタイプなのかな。いやーでも、初対面の相手に不幸自慢するイヴォンヌが結構怖い。一度は断りながらもお金も受け取っちゃうし。
夫が見ず知らずの相手に200万ドルもあげたら、そりゃあ誰でも怒るよな。しかし、物理的にキーキーピーピーうるさい妻、ずっと一緒にいたら相当疲れるだろうな。この短時間でも苛立つもん。それに、専業主婦?で夫の稼ぎにけちをつけるのはやっぱり御法度。
だけれど、妻のミュリエルは欲に正直過ぎて裏表がなくて、むしろ好き。あっという間にお金使い切りそうだけど。
にしても、宝くじが当たると良くも悪くも人生狂いそう。金に目が眩んだ人が寄って来たり旧知の人も態度変えて来たりして、人間不信になるわあ。
お金を前にすると人間性が顕になるし、金が絡んで来るから離婚は泥沼化する。
チャーリーは、一番やりたくて好きなことが人助けなんだろうね。妻のミュリエルも別に悪い人ではない。欲求に正直なだけで。イヴォンヌだけ美化されてるけど、倦怠期の彼の目に映る新たな刺激と癒しなだけ。彼女だって金受け取ってる時点で下心満載だし、ミュリエルと同じ穴のムジナ。それなのに、善悪の対立という描き方をされていて、一方的にミュリエルを悪人に仕立てているけど、どちらが悪いという話でもない。幸せを求めるのは当たり前だし、妻としての当然の権利の主張。
自分ではなく誰かのためにお金を使った方が幸せになれる気もするけれど、慈善行為も度が過ぎると胃もたれして来る。これは彼らが優越感に浸るための自己満足じゃん、と突っ込みたくなる。
というか、チャーリーの優しさが妻である自分に対してではなく、その他大勢の人々にばかり向けられていたら、そりゃあ淋しくなるよね。ミュリエルの怒りばかりがクローズアップされているが、これは淋しさの裏返し。それに気付いてもやれず、外に女作って知らない人に金ばら撒くチャーリーが最低。一番大事な妻を一番大事にしろよ。
しかも、結局チャーリーとイヴォンヌの2人は、殆ど苦労せずに棚ぼたで幸せになっている。もっと苦労してお金じゃないところで幸せになったら応援したくなるのに。金がなくなったらイヴォンヌもミュリエル化するのでは、という不安も拭えない。
善の心や良心は、絶対に自分に返って来る。
普段から世界に手を差し伸べていれば困った時に助けて貰える。だから徳を積もう、とは思った。
最後の最後で実話と明かされて、生々しさが一層込み上げた。それは恐れ入りました。
唯