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月夜釜合戦のおむぼのレビュー・感想・評価

月夜釜合戦(2018年製作の映画)
3.7
白塗りの芸人おやじに盗まれたやくざの釜を巡り、街中の釜が高騰していく『釜泥』という落語を基にした労働者、立ちんぼ、アジテーター、ヤクザといったアウトサイダーたちの一波乱を描いた話と、その全ては大手ゼネコンと公安の掌で動かされているというきな臭い真実が、2017年の西成の街を舞台に16mmフィルムで収められている寓話性の高い映画である。

なおかつ現地の労働者によるやりたいことやっている感じの自然体の演技や、通りの露店と労働センターといったここ3年ほどで消されてしまったものが残っているぎりぎりの状態を映像に収められているためドキュメント性も高い。
山本政志監督の『てなもんやコネクション』『アトランタ・ブギ』に近いと思った。 

以下は上映後の監督と主演のトークショーで話していたことの一部の箇条書きである。
・最初は監督自身が2年ほど住んだ釜ヶ崎のドキュメンタリーを作ろうとしたが現地の人々に拒否感を示された
・しかし劇映画の撮影だと撮影中に5分に1回は「おれも出してくれんか」と話しかけられるほど乗り気だった
・その人たちが自然にやりたいと思う演技は概ね昔の東宝の映画に影響を受けている
・監督は劇映画なら『幕末太陽傳』みたいな映画を作りたかった
・飲食店にあった「盗んだ釜返せ」の貼り紙や炊飯ジャーをカバン代わりに歩いていた労働者の姿を見たことで『釜泥』のような話が現実にありうるような場所であると感じた
・主役も本物の労働者にしようとしていたが、撮影に入る前に連絡が取れなくなったのでバーターで川瀬陽太氏になった
・渋川清彦氏が演じるやくざの2代目がズボンを下げて過去の因縁を語るシーンはもちろん映像には映っていないがモロに出している(前貼りの配慮無しゆえの力技)
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