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1987、ある闘いの真実のadagietteのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
5.0
ソウル五輪の前の年『タクシー運転手』で描かれた光州事件の7年後。
韓国で民主化運動に火がついたその経緯を描いている。
金日成に家族を皆殺しにされた脱北者が、南で公安の職を得て過激なアカ狩り部隊を編成している。
その部隊が ソウル大生を拷問死に至らしめたことが発端。
警察の犯罪。
厳重に隠蔽したはずの情報が、検事から 医師から 監獄から  メディアに漏れていく ....

樺美智子さんが亡くなった日本の60年代安保もスゴかったといわれる反面、 中途半端 ただのガス抜きという意見もある。
本作の映像の激しさに そうかもしれない、と感じる。

『タクシー運転手』に同じく暴力描写が かなり凄い。
拷問、警官隊、被弾したイ・ハニョルの映像はだれもが見たことがあるあの写真の忠実な再現だ。
  http://japan.hani.co.kr/arti/politics/17545.html
なぜ市民は怒り、戦ったのか?
大手新聞も大統領府からの命令に逆らい、真実を報道しようとする。
すべてではなかろうが、寺や教会も人権活動家を守った。
それは あの激しい暴力があったからだろうか?

暴力団さながらの公安精鋭部隊も恐ろしいが、Gジャンで鉄棒を振り回してくるヒラと思しき警官隊はもっと恐ろしい。
あの制服の集団。
権力のお墨付きを錦の御旗に、暴力で市民を制圧する集団。

専制君主の暴政から逃れようと誕生した共産主義が、今度は自由社会を脅かす存在となり、そこから自らを守ろうと軍事政権が人々を弾圧する。
暴力の連鎖。
腕力が暴力とならないために管理・制御が必要なように、権力も常に枷をはめておかなければならない。
いったん、自由を得て 人々を弾圧しはじめた権力に、再び枷をはめるために かくも多くの犠牲が払われた歴史に学ばなければならない。

それにしても、人はなぜ、権力を欲し暴力に酔うのだろうねぇ ...
他者を傷めて抹消してもいい存在と認識してしまうのは なぜだろうか...
”治安”を錦の御旗に、そんな自己の暴力衝動を自由に発散させて喜びを感じる、人間はなんと愚かしいことよ ....

実力者ぞろいの役者さん、だれか選べと言われても困るが、脱北し南に忠誠を尽くした挙句トカゲの尻尾にされる、悲哀と暴力をパンパンに詰め込んだ、パク所長とチョ刑事に涙。

東京は新宿シネマートのみ。そこは残念。

http://1987arutatakai-movie.com/
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/post-10983.php

https://www.tbsradio.jp/290498


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