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1987、ある闘いの真実のeyeのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.0
1987、ある闘いの真実(2017)

韓国国内における総合芸術賞にあたる百想(ペクサン)芸術大賞

・映画部門
・シナリオ賞
・男性最優秀演技賞
・男性助演賞

4部門受賞

韓国での権威的映画祭の一つ青龍(チョンニョン)映画賞

・最優秀作品賞
・主演男優賞
・撮影照明賞

3部門受賞

その他海外映画祭でも多々賞賛されつつ韓国国内では700万人以上を動員した実話ベースの社会派ドラマ

軍事政権の元で国民の自由はない様子が描かれ韓国民主化闘争において学生や市民らを中心に命を懸けながら民主化へとまっすぐ突き進むストーリー

契機となる事件は1987年1月14日まで遡る

デモに参加していたソウル大学生パク・ジョンチョルが捕まり警官の取り調べ中に死亡してしまう

実際には取っ捕まえたあとに過剰かつ不必要な拷問を行なっていた

警察はパク・ジョンチョルの死は偶然を主張し「取り調べ中のショック死」と意見を曲げない

「警官の拷問」があることが裏に潜むが、ひたすら隠し通す

そこにマスコミが駆け付け徐々に大きな動きとなっていく様子が描かれる

ちなみにまだレビューしていないけど

光州事件(1980年)を描いたソン・ガンホ主演『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)での市民・学生への弾圧も下地に練りこまれてこの映画とリンクしていく

80年代の韓国政府は都合の悪いことを何があっても絶対に明かさず言論弾圧・情報統制・報道規制を抜かりなく行ない反論に対し「銃撃も問わない」という揺るがない信念を持つ

政権批判すること=北の手先・アカという概念のもと
「脱南者」の概念が生まれるくらい厳しい独裁体制を強いていた

光州事件(1980年)
大学生パク・ジョンチョル拷問致死事件(1987年)

これらの事件をきっかけに韓国は民主化していくも
流れは再び保守的になり批判を許さない強権政治手法へと流れていく

実際にこの『1987、ある闘いの真実』も『タクシー運転手』も制作時には韓国政府からあらゆる黒い手引きがされたと語られている(※チャン・ジュナン監督のインタビューより)

この映画は登場人物の視点やストーリーを捉える角度で意見は変わるんだろうけど

私はあくまで「歴史の流れ」としてこの映画をとらえたことで特に学生・検事・警察等どの組織・人物にも感情移入はしなかった

ただ考えさせられる点がはっきりあって

それは本来「言論・思想の自由がある」はずが実際にはそんなものは最初からなく「常に統制されている」という恐怖は今の日本にも当てはまると思う

このレビューを書いている現在新型コロナにより経済混迷や生活苦が叫ばれる中生きるために必要な声を上げ続けることが何よりも重要になっている

1人の意見ではどうにもならないが、10人・100人・1000人と集まることで政府の考え方に一矢を投じることができるということを教えてくれる

「SaveOurSpace」という映画や音楽等の文化を守るための動きとも繋がっていて国や内容は違えど「声を上げ続けること」への必要性や類似性を垣間見た気がした

映画の話から現実世界の話として横道や脇道にも行ってしまったけど・・

韓国国内の情勢や変化・進展を考える上で教科書を通じた歴史を学ぶよりも映画(芸術)を教材として流れを学ぶのにもってこいの作品だと思う

不変的な人々の意識や行動の基礎を捉えた非常に芸術的な作品
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