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1987、ある闘いの真実のmegurosのレビュー・感想・評価

1987、ある闘いの真実(2017年製作の映画)
4.0
1980年の光州事件を描いた「タクシー運転手」、1981年の釜林事件を描いた「弁護人」、そして民主化闘争に至るその後の事件を描いたのが本作。ソン・ガンホは不在だが、ソル・ギョングやハ・ジョンウ、キム・ユンソク等のオールスターキャスト。

全斗煥大統領による軍事政権下において”反共”のための活動が最優先される中、警察の苛烈な拷問によってソウル大学の学生が死んでしまう(釜林事件も同じような話だったが...)。組織ぐるみでその事件を隠蔽しようとする政権、警察。それに対して圧力を受けながらも検察、医師、新聞記者、看守、それぞれが軍事政権の打倒、民主化、法による統治を求めて巨大な権力に立ち向かう...。

政府から言い渡された報道指針というものがあってもその時に立ち向かったメディアがあったということ。検察も政権の犬ではなく、正しさを求めて作動していたこと。彼の国の過去に此の国の今が学ぶことは少なくない。アメリカのように武装蜂起して政府を倒す権利/武器のない国であればこそ「私ができるのはここまでです」と小さい個がバトンリレーのように連帯し、巨大な権力と闘う。その姿は決して他岸の火事ではない。

キム・ユンソク演じるパク所長がただの悪役ではなかったのも良かった。敵役として登場はしているものの、自身の過去の経験(*)から「アカの逮捕を邪魔する奴は無条件でアカと見なす」という狂信的な反共精神を持つに至った人物で、その自身の愛国精神が政権によって裏切り続けられる悲哀にも満ちたキャラクターでもあった。

(*)「お前は地獄を知っているのか?家族が死んでいく様を眺めながら声すら上げられない。それが地獄だ」が特に迫力満点でしたね...。

新聞社の部長?の人がたまに韓国映画でお見かけする方(ホンジャマカ石塚に似てる人)でコ・チャンソクさんというらしい。良い役でしたが、この方は「タクシー運転手」にも特別出演してたとか。
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