西本不律

ダリダ~あまい囁き~の西本不律のレビュー・感想・評価

ダリダ~あまい囁き~(2016年製作の映画)
3.5
大スターであると同時に、稀代のドラマクイーンでもあるダリダの半生をまとめた伝記映画。
名声と引き換えに均衡を失う人生の典型を生きた彼女は、恐らく映画の内容よりも数段激しく不安定で、なおかつショウビズを生き抜く「したたかなすれっからし」でもあったはずと邪推する。
しかし私生活と歌の世界の境界が曖昧になり「生きるために歌うのか、歌のために生きるのか」の判別さえ失くしていく姿は、壮絶の一言である。脚本に手加減や美化が加えられていたとしても「彼女の人生をより深く知りたい」と考える人間にとって、鑑賞の価値は充分にある作品だった。
個人的には、40代で果敢に新機軸を打ち出したディスコ時代の彼女を愛しているが、今回、切々と歌い上げる哀歌の凄みも再認識。特に『灰色の途』の歌詞は、字幕のおかげで、初めて正しく把握できた。
70年代のスターに「私は病んでいる、完全に病んでいる」と絶唱させ、なおかつ大喝采で受け入れるフランス大衆の懐の深さ。かように逞しい歌謡文化を育んだシャンソンという土壌の豊かさに、改めて感じ入ることができた。