よしまる

オンネリとアンネリのおうちのよしまるのレビュー・感想・評価

4.2
 何度観ても新たな発見がある、作り込まれた世界観。

 仕事柄、子供部屋のコーディネートを頼まれることもあるのだけれど、さすがにここまでのインテリアは出来ないし、そもそもがさせてもらえない。
 いくらお子さんが「このカーテン可愛い〜!」と言ってもたいてい親が「飽きるからやめときなさい」「すぐ大きくなるんだから」と反対する。「水色の壁にしたい」なんて言ってくれるお子さんにはさすが!と思うけれど、親はまず「ダメダメ、壁なんて白が一番なのよ」なんてお嬢ちゃんテンションダダ下がりは日常茶飯事だ。
 和風のシンプルな侘び寂びも大事だけれど、日本人がインテリアを楽しむのはまだまだ先のことだなぁと思う日々。

 と、余談はこのくらいにして、北欧の絵本から生まれたキュートでポップな映画が「オンネリとアンネリ」。

 何度観てもどちらがオンネリでアンネリか覚えられないけれど、そんなことはどうでも良い。子供が夢に描いた世界をそのまんま具現化したようなおうちを手に入れたふたり。ちゃんと家に帰って、このうちに住んでいいかを確認してくるとこから最高。
 そう、はっきりとした自分たちの意思を持って行動する子供たちと、無関心な大人たち。その対比が物語の軸になっている。

 離婚していたり、仕事や幼な子の世話に忙しかったりと、決して愛情がないわけではないけれど、子供と真っ直ぐに向き合えない大人と、それを敏感にキャッチして自分たちの城を築く子供。この関係性は、おばあちゃんに搾取されるアイス屋のお兄さんや、亡き夫の遺した豚の貯金箱を売っているお隣さんにもまた反映されていて、めくるめくような夢の世界、ファッションやインテリア、そして魔法の数々につい目を奪われがちだけれど、孤独を背負った人々の自立や和解の物語に収束していくのがめちゃくちゃ気持ちいい。

 こんな世界に住めたら楽しいだろうな〜という夢物語なんかじゃなくって、夢の世界を媒介として人とのつながり方を見直し、孤独と向き合い、自立し、関係性を築き上げていくという極めて現実的なテーマを突き詰めた、優れたおとぎ話なのだ。

 ビジュアルの魅力だけなら前半で飽きるはず。サスペンス仕立ても盛り込みつつとはいえ、子供も大人も関係なく一様に、こうした個々の自立心や関係性に着目して物語を紡いでいるのが実にフィンランドらしい映画と言えるのかもしれない。
 いまのところ3作作られているので、そちらのレビューもいずれまた。