ゴン吉

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのゴン吉のレビュー・感想・評価

4.2
アメリカの法無き戦いを描いたクライムアクションドラマ。
アメリカとメキシコの国境地帯で繰り広げられる麻薬取り締まりを描いた「ボーダーライン」(2015年)の続編で、本作は密入国がテーマ。 
前作に引き続きテイラー・シェリダンが脚本を担当し、ベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンが共演。少女役をイザベラ・モナーが演じる。 

オープニング早々、CIA捜査官(ジョシュ・ブローリン)が情報を得るために罪なき市民を空爆して殺害するシーンで始まる。
イラクを内戦状態に陥れて崩壊に導いたアメリカは、今度はメキシコのカルテル同士を戦わせて共倒れにさせることを企てる。
一方の組織の弁護士を殺害し、もう一方の組織のボスの娘(イザベラ・モナー)を高校からの下校中に襲撃して拉致し、対立組織の仕業に見せかける。
しかし、娘を移送中にメキシコ警察の襲撃を受け、アメリカ軍は反撃して20人以上ものメキシコの警官を皆殺しにする。
その映像が一般市民に流れると、アメリカ国防省は現場の実行傭兵(ベニチオ・デル・トロ)と拉致した少女を抹殺することを命令するが…  

自国の利益のためであれば何でもするアメリカ合衆国の謀略を描いた衝撃作。
アメリカの国防長官がテロリズムの定義を「暴力を用いて政治的な目的を果たそうとする個人や団体」と説明する。
言うまでもなくその最たるものがアメリカ合衆国であり、この作品の最大のテーマを国防長官のセリフとして表現しているのが興味深い。
冒頭から終始、重々しい単調なBGMの繰り返しで、最後まで緊張が途切れることなく画面に釘付けです。
本作のボーダーラインは国境という意味のほかに、人として超えてはならない一線の隠喩でもある。
立場が上の人から、人としてのボーダーラインを超える指示が出た時どうすべきか?
本作品では、ボーダーラインを越えずに踏みとどまった少年と、それを超えた二人の少年が登場し、それぞれが衝撃的な別の運命を辿るのが印象的。
一方、主人公であるアメリカ軍の傭兵も、組織から非人道的な命令を受ける。
果たして彼がとった行動と、その結末が見どころです。
正義とは何かを投げかけた骨太の作品です。
「将来について話そう!」

2022.9 BS・TBSで鑑賞(土曜映画デラックス・吹替)  
2018.11 Filmarksさんの試写会にて鑑賞(トークショー付)
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