前作の製作陣が一新されたにもかかわらず、同様のクオリティと緊迫感を出すのは並大抵のことではない。いや、続編である本作は灰色の世界にさらに踏み込んでいると言うべきか。
米国カンザス州でメキシコから来た不法入国者たちがショッピングモールで自爆テロを引き起こす。入国を手引きしたのが麻薬カルテルと睨んだ政府はCIAのマットに組織の撹乱を命じる。マットは殺し屋であるアレハンドロと共に麻薬王の娘イサベルを誘拐し、組織の混乱を引き起こそうとする……。
脚本のテイラー・シェリダンはアレハンドロとマットという曲者二人のキャラクター像をさらに深める。アレハンドロは現代のアンチヒーローに当たる。デル・トロは野に放たれた狼のような男の内面に時折穏やかさを潜ませる。
その良い例がイサベルとの交流だろう。二人の関係は擬似親子に見えるが、被害者家族と加害者家族とも言える。しかも、アレハンドロはイサベルに亡き娘の面影を見る。
その情感を強調しているのがヒドゥル・グドナドッティルの作曲だ。グドナドッティルはヨハン・ヨハンソンの核を残しつつ、優しさを滲ませている。それがアレハンドロの葛藤に繋がってくる。「ヨハン・ヨハンソンに捧ぐ」という献辞を見たとき、寂しさを感じたのは私だけではないはず。
三作目が構想段階の本シリーズだが、次はシェリダン自身が監督してみてはどうだろうか。