円柱野郎

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

米国内で自爆テロ事件が発生。
米国国防省はメキシコからの密入国を手引きする麻薬カルテル同士をつぶし合わせる極秘工作の実行を決定。
命令を受けたCIA工作員のマットは麻薬王の娘の誘拐を計画する。

前作「ボーダーライン」の人が生み出す正邪の境界線を浮き彫りにした内容は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作家性とマッチしていて非常に深みのある作品だったけれど、監督が交代した本作はそれと比べると少しマイルドというか、普通のサスペンス風味という感じに落ち着いてしまった気がする。
いわゆる“汚れ仕事”を行う暗殺者のアレハンドロやCIAのマットと価値観のぶつかる相手(観客の代理人)がいないため、ストーリーの上で倫理的な葛藤が前作ほど表面化しないからだが…、そこは本作で描きたいテーマが違うということなのだろう。
まあ全く葛藤が無いわけではなく、少女を救うか否か、もしくはアレハンドロを救うか否かの選択はあるわけだけど、結末自体は予定調和だよね。
個人的にはもう一歩「綺麗ごとの通用しない世界」として踏み込んで欲しかったかも。

メキシコからの不法入国という時事的な問題を取り上げた硬派な話ではあるものの、あくまで舞台装置として割り切っている感じはする。
結局自爆テロの犯人も米国籍の者だっていうんだから、この作戦自体が茶番じゃんという事になるが、お上に翻弄される裏の実行部隊を描いてるってことでエンターテイメントなサスペンスに寄っているよね。
その辺が前作より軽く感じる部分。
とはいえ説明台詞が極力排されているのは良いし、ベニシオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンという渋い二大俳優の演技は魅力。
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