恭介

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイの恭介のレビュー・感想・評価

3.9
ジンワリ嫌な汗が滲んできそうな
異常なぐらいの緊張感が心地よかった前作のボーダーライン。

前作も脚本を担当し、最近観たサスペンス物で群を抜いて見応えがあったウインド・リバーで初監督とは思えない力量を発揮したテイラー・シェリダンが再び脚本を担当しているとあって、自分の中ではまさに待望の続編。

監督がヴィルヌーヴからソッリマに変わり、前作の主役であるエミリー・ブラント抜きでアレハンドロとマットが主人公。同じ世界観と雰囲気だが前作とはまた違った
作品に仕上がっている。

今回も麻薬カルテルが大きく関わっている内容だが、取り扱っている題材は麻薬よりも不法入国者問題とテロリズム。その中でアレハンドロとマットが国境、善悪、生死、職務倫理などあらゆる境界線=ボーダーライン上で翻弄され、奮闘していく姿をスリリングに描いている。

また、主人公がエミリーからオッさん2人にシフトしたので、アクション要素が濃くなり、前作に輪をかけてやりたい放題(笑)悪を根絶する為なら手段を選ばない度もグレードアップ。国から指令が出るところや、作戦、装備まで、まるで黒いミッション・インポッシブルだ(笑)

しかしただのドンパチが激しいだけの、黒いエクスペンダブルズにはなっておらず、前作から更に掘り下げたアレハンドロとマットのキャラクターも進化している。


以下、ギリギリのボーダーラインでネタバレあり。




前作である程度のキャラクター説明が済んでいる続編だから、オープニングからトップギアに入れてくる。最初からド派手にドッカンボッカンシーンの連続で、胸ぐら掴まれてボーダーラインの世界に引き戻された。そういや前作もいきなりドッカンきたなぁ〜みたいな。

それに加え、ヴィルヌーヴお馴染みのあのノイズにも似た音楽。ヴゥゥゥ〜ンヴゥゥゥ〜ン。あの音がまるでパブロフの犬のごとく、条件反射的に私の緊張感を高める役割を担っている(笑)前作から引き続き、あの音を使ってくれてたのは嬉しかった。

中盤からのアレハンドロと少女の交流はまるで黒いウルヴァリンのようだ。2人の微妙な関係性の中で、アレハンドロが拭い去れない過去とこれからどう対峙していくべきなのか?シカリオ=暗殺者にならざるおえなかった自分はこれからどうすべきなのか?など、彼の心の変化を軸に進行していく。

そんなアレハンドロの微妙な変化はマットにも伝染し、職務の為なら悪魔にでもなる勢いだった彼にも変化の兆しが見えた。

麻薬カルテルを撲滅させる為なら地元警官を殺してしまおうが(まぁ買収されている警官達だけど)街中で銃を乱射しようが御構い無しの、ヤンチャなオッさん2人が、その敵対するカルテルボスの娘と関わりを持つことによって、職務より優先すべき事がある・・かも?な心情に変化する皮肉さに、シェリダンの脚本の秀逸さを感じた。
アレハンドロを殺されたと思い込んだマットが、問答無用に敵を瞬殺するところは、黒いジョン・ウィックのままだけど(笑)

ま、あの広い国土で将来のシカリオ候補にたまたま出会う偶然性はこの際、目をつぶろう(笑)その彼が放った弾丸が、たまたま両頬に風穴を開けただけで助かったアレハンドロにしてみれば、そのたまたまな出会いが運命的な出会いだったのだろう。

その2人がこれからの将来について語り合う内容が知りたい。
そんなラストだった。

一応三部作の構想だから、次の続編を首を長くして待っていよう。
恭介

恭介