ホイットモア大統領

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのホイットモア大統領のレビュー・感想・評価

4.2
来年の目標:
ベニチオ・デル・トロの目つきを習得する。

アレハンドロは10年代を代表するキャラクターの1人になりましたね。
あんな目…死んだ魚のような生気がなく、それでいてギンギンに殺気を放つあの目で睨まれたら、そりゃ何も言わずに逃げ出すわ!

そんな本作は、アレハンドロ先生の鬼の交通安全教室、先生と行く地獄の遠足、先生との暗黒の進路面談、という行程でお送りします。

中でも、カルテルに家族を殺された元検事アレハンドロと、カルテルの親玉の娘イザベラの逃避行という構図が面白い。
カルテルにはさらりとした「アディオス…。」で無数の銃弾を叩き込むほど容赦ないアレハンドロだが、仇敵の娘とはいえ、子供には今までにない情けを見せる。このような彼の人間味が描かれることで、過去の深掘りに繋がるわけだ。

また、それに呼応するかの如く、ジョシュ・ブローリン演じるマットも前作以上に感情豊かに描かれる。
OPこそ鬼畜の極み、中盤こそ非情な命令を下す彼だったが、友を助ける為なら上司、そして、政府にさえ喧嘩を売る。

つまり本作は、前半こそ世界各地であのようなテロが当たり前のように起きている事実に、終わりなき戦争を切り取っているが、後半に描かれるはアレハンドロとマットの熱い友情なのだ。
ただ付け加えると、その前半の映像は今年観たホラー映画のどれよりも恐ろしかった。

直前にステファノ・ソッリマ監督の『暗黒街』を予習して行ったが、今回は良くも悪くもカッチリ丁寧に仕上げた印象。
結果として、前作では脇役だった2人のスピンオフ的作品になったが、“次作” への繋ぎと考えれば十分満足。

「 “Sicario” になりたいのか?」
ラストのこれ、『ゴッドファーザー』に似た扉演出に鳥肌。