アンダーシャフト

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

4.3
これを観ながら、一瞬、現アメリカ大統領がわめき散らすニュース映像を思い出した。

アメリカとメキシコの国境を挟んで展開されるクライムサスペンス。
多くの方がおっしゃるように、ベニチオ▪デル▪トロの寡黙なカッコよさに目を奪われます。動いてても止まっててもカッコいい。序盤に出てくる独特な銃の撃ち方なんか、怒りの感情がその乱暴な連射にすごくよく表れててめっちゃカッコいい。

地平まで続く乾いた荒れ地と青空。人間の存在▪生命があまりにちっぽけに感じる風景に、武骨で非情なストーリーと登場人物たちの心の渇きや無情さがよく写し出されています。。
劇中、手話で交わされる会話が一番人間らしくて温かみがあるのが切ない…

ショッピングセンターで起こった自爆テロ。アメリカ政府は、実行犯がメキシコからの不法入国者であると推測し、それを斡旋している麻薬カルテルの壊滅を画策する。
その実行を極秘裏に託されたCIA捜査官マットは、カルテル同士の抗争で互いが自滅する作戦を立案。カルテルと深い因縁を持つ男、アレハンドロは、マットに説得され計画実行に加わることになる。
まず、あるカルテルの弁護士を襲撃し殺害。次に、その報復に見せかけ別のカルテルのボスの娘を誘拐。その後、自作自演の救出作戦で、彼女を弁護士を殺されたカルテルの縄張りにある警察署ヘと移送する…と、計画はマットの想定通りに進むかのように見えた…

でも、移送中続けざまに発生するトラブルによって、マットとアレハンドロは別動を余儀なくされます。それぞれの立場で孤立する2人。事態の急変。2人は大きな決断を迫られることになります。

生と死、合法と違法、正義と悪、信念と現実、反抗と隷属…この映画は、さまざまなボーダーを観る側に想起させ、その一線を越えるか越えないか、さまざまな決断の場面を見せてくれます。ここが、この映画のひとつの大きな見所ですね。

物語の最後に閉じられた赤い扉。それは、日常と非日常(=アンダーグラウンド)の境界線だったのかもしれません…これは、「ゴッドファーザー」のラストでも思ったこと。

一作目とはまた別の、とても観応えのあるすごい作品です。