しどけ梨太郎

マルクス・エンゲルスのしどけ梨太郎のレビュー・感想・評価

マルクス・エンゲルス(2017年製作の映画)
3.0
マルクスの伝記映画に見せかけた現代批判映画。
マルクスが打破しようとした資本主義社会が打破されるどころかさらに悪い方向に向かっているということが過去の映像から現代の映像へと変わっていくエンドロールで示されている。まさしくlike a rolling stoneだ。マルクスの頑張りを映画として見せた後にそれらが結果的に世界を変えることができなかったと伝える冷酷さがある一方で、「彼の批判は終わらない」としてマルクスの次を担うのはお前たちなんだぞというメッセージを最後に持ってきたのにはグッときた。革命しないと。

もうひとつの現代批判的な要素は反知性主義批判だ。「労働者じゃないのに労働者について分かるはずがない」「拷問を受けた経験もないのに偉いことを言えるはずがない」「多くの聴衆から支持されているのだからすごいはずだ」という反知性主義。それに対して知性で切り込んでいくマルクス、という構図は完全に反知性主義が力を持ってしまっている現代に対する批判である。我々はマルクスにならなければならない。知性が経験に勝るということを声高に主張していかなければならない。

エンゲルス役のシュテファン・コナルスケの顔がめちゃくちゃ好みだったので幸せだった。

ちなみに物語的にはあまり面白くない。