けーはち

クレイジー・リッチ!のけーはちのレビュー・感想・評価

クレイジー・リッチ!(2018年製作の映画)
3.5
彼氏の実家(シンガポール)に行ってみると超絶大富豪の家系だった⁉──身分違いの恋という王道中の王道、恋愛悲喜劇を「生粋のニューヨーカーだが中国系女性」と「シンガポール華僑系大富豪の御曹司」でやってアメリカで大人気、ってのが斬新。

寝床に魚の死骸を投げ込まれてイジメられるシーンはイタリア移民マフィアを描いたコッポラ監督『ゴッドファーザー』のオマージュ(理解しやすいように同監督の『地獄の黙示録』パロも流れに組みこまれている)。本作では「家族最優先」で個人の夢や情熱は捨てさせる華僑の一族を女系のマフィアのごとく描いている。そして現地では彼らがマジョリティ。ゆえに家柄や資産でなく「アメリカ人だからダメ」と彼氏の母親に拒絶されるシーンは、世界中ルンルン気分で大手を振って歩ける最強常勝大正義アメリカ人にとってありえぬ「差別」、或いはベトナム戦争のような不可解な「敗北」に相違ないのだろう。

冒頭の高級ホテルでの中国系への差別、一転して、カネで買われた白人たちが中国系に膝を屈せざるをえなくなって唖然とするシーケンス、そこからの延長線上に見えてくる「敗北」感。

だから、結局、米国人主人公がクレイジーリッチな彼氏の実家を捨てさることなく、彼氏の愛をも手に入れる……いわば「完全勝利」を掌中に収めてしまう(男女立場逆転した主人公の友人夫婦が決裂を迎えるという対比もあるが)ふんわりしたハッピー・エンディングに着地しているのは、何か中途半端に見えるが。

とはいえ、この手のロマンティックコメディは、きらきら✨ファンタジーでオチつけるもの。また仮に結婚までこぎつけても嫁姑戦争はそこから始まるわけだしね。

王道をポップにリッチにきらきら✨と、そして新しい視点を踏まえてやる、おまけにシンガポール観光気分、という意味では標準以上に楽しめる作品。この手のロマコメは主人公の親友ポジションが楽しさの鍵を握るといっても過言ではないが、『オーシャンズ8』でもアジア人女ラッパーを好演したオークワフィナがめちゃくちゃ良いキャラでやってくれている。