こうん

クレイジー・リッチ!のこうんのレビュー・感想・評価

クレイジー・リッチ!(2018年製作の映画)
4.2
先日ベトナムに旅行した折にホーチミンのシネコンで観てきました。
アジア人の端くれとして多様なアジア人の中でこの映画を観られたのは得難い体験でしたが、英語が半分くらいしかわからなかったので帰ってきた日本でまた観てきました。

いろんなことを考えたりもしましたが、単純に面白かったし、2018年のハリウッドメジャースタジオ配給の大ヒット映画として、その存在がとても好ましいと思いましたね。
ブルース・リーも草葉の陰て喜んでいることでしょうよ。

伝統的なロマンティックコメディのアップデート版などと耳にしていたけれども、れっきとした2018年らしい女性映画で、もちろん“花より男子”的な物語の枠はあるんだけど、大陸を飛び出したバイタリティある中国人の歴史の陰日向で生きてきた女性史がきっちりと織り込まれていて、これはなかなかの映画であると思いましたよ。
作品のニュアンスとしては「マダム・イン・ニューヨーク」が近いかなと思いましたね。
終盤のマージャン対決の後、主人公レイチェルが母親を伴って誇り高く颯爽と立ち去るシーンでは、ちょっとアガリました。
レイチェルの前に立ちはだかるエレノアのキャラクターや佇まいやいろいろ背負ってます感が良かったし、演じるミシェル・ヨー(キングって言っちゃいがちだオジサンは)も素晴らしかったね。

でも一番素晴らしいのはオークワフィナさん演じるペク・リンですよ!
彼女が出ているシーンはすべて1ランク映画の格が上がっていた気がしてましたよ。声や顔や表情や動きやせりふ回しや、何もかもが最高で、おまけにペク・リンは最高の親友。なにか文句がありますか?
ウーピー・ゴールドバーグ並みの逸材と思いますよ!

全編を貫くとにかく桁外れのスーパーリッチの描写は、ある意味ファンタジーとして楽しかったですね。あんな人たち本当にいるのかしら?
金持った人間は大なり小なり考えることはまぁ同じで、そこらへんがアメリカでヒットした理由かもしれんですね。
まぁ移民の話だからアメリカの老若男女に伝わったのかと思うけど。
主演も美男美女だし(だが俺には小島よしおと池上季実子もしくはスー・チーに見えてた)。

しかしこの映画をホーチミンで観た時は、街に渦巻く物凄い喧噪も相まって、極東のどん詰まりでは感じえない、国境を越えていくアジア人たちのハングリーさゆえのバイタリティを感じて、なんかちょっとシオシオとなりましたです。
ガイドブック片手に観光客向けの食い物屋やお土産屋に集まってくる日本人は、外から見てあんまり魅力的じゃないですよね。
気張って路上のオバちゃんが売ってるフォーとなんかの串肉を喰ったらちょっとゆるくなっちゃったけど、元気です。

あとこの映画で欧米では同じアジア人の顔立ちでもそのルーツとキャスティングをめぐる論争があるそうですが、心底くだらないし、東南アジア系の人が出てこないからって批判される意味がよくわからないし(だって中国移民のセレブの家族の話なんだから)、これからますますあらゆる血や遺伝子やルーツや伝統がボーダーレスに混じり合っていくわけなのだから、その“正しさ”は一過性のものでしかないし無意味。
ましてやこんな娯楽映画で、そんなこと言う?と思いますよ。自ら楽しいこと減らしてどうするんだ!
…とかなんとか思いますけど、まずは餃子食いたいです。
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