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青夏 きみに恋した30日のoldmanSEヨKのレビュー・感想・評価

青夏 きみに恋した30日(2018年製作の映画)
3.5
【原作未読】

※ちょいネタバレ気味のレビューです。

どうやらこの物語の本当の主人公は泉吟蔵(佐野勇斗)らしい。

吟蔵が、一応の主人公である船見理緒(葵わかな)か、大鳥万里香(古畑星夏)、どちらの女神を選ぶか?が=彼の将来のメタファーを意味している。

東京から祖母の家に夏休みの間帰郷していた理緒と付き合うことは、吟蔵にとっては外の世界に旅立つことに繋がる。

一方、お互いの親がゆる〜く決めた許嫁の万里香との関係を続けることは、吟蔵にとっては変わらない地元の生活を続け、実家の寂れて行く酒屋を継ぐ将来を意味する。

まぁ多分原作はストレートな少女漫画と思われるので、一切の性の描写はないけれど、田舎で歳上の万里香とは理緒が現れるまでお互いまんざらでもない気持ちだったら、仮に現実的で健康な男子高校生ともなれば…
(因みに劇中では万里香の巨乳アピールを吟蔵は完全スルーしているということは、逆にとも言える…)

映画としての出だしは少女漫画原作のノリではあるが、後半に進むに連れ青春映画の雰囲気も描かれ、それに伴う映像表現など作り手のこだわりも感じさせてくれる。

ただ、やはり地元で生活し、進みたい将来を選ばないという構造のメタファー=象徴が万里香というのが、彼女に背負わせているモノがあまりにも可愛そうに思えてしまう。
コレで肉体関係の描写も描かれていたなら余計残酷な苦い話になっていただろう。
青春映画の表現としてその描写もアリかもしれないけれど、別のジャンルの物語になってしまう(笑)

それまで、ずっと地元でナァナァの関係を続けていた万里香にとっては、吟蔵にハッキリ好きということを告白する理緒のイメージは、巨乳アピールどころでは太刀打ち出来ないような質の違う武器、清純さで男を虜にする技術を持った、まさに生き馬の目を抜く戦々恐々とした都会で鍛えられた悪の使者&策士でしかなかったに違いない。
そこいらの複眼的な心理描写も描いてくれていたら面白かったかもしれない。
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