何というか、しっかりと考えられて構成された、良い映画だな、と感じた。
まず、主題が良い。前半の家族の描写について、法的・倫理的には間違いだらけだが、そこに一つの「幸せ」があったことは明らかだ。
しかし、その幸せのバランスの危ういこと。破滅に向けた気配がむんむんと立ち込める。
そして案の定そのバランスが崩れ、全てが収まるべきところに収まったとき、「幸せ」は完全に解体され尽くされ、そこではただただ非常な現実が剥き出しになるのみ。
分かりやすい論理の上に構築される以外の幸せがあること、そして、そういう「不安定な幸せ」にしか幸せを見いだせない状況にある人がいることの哀しみ(それと可笑しみ)、それを丁寧に描いていると感じた。
あと、特筆すべきはやはり全員の演技。というか全体のリアリティ。日本映画にありがちな「演技してる感」が誰からも全く感じられない。本当に、そこにその人たちが「確かに生きていた」感じがある。そして言い尽くされているが、安藤サクラ氏の涙よ。戦慄ものでした。
語られない部分の量もちょうど良い。見終わると、誰かとこの映画の話をしたくなる。
そんな良い映画です。