ひでやん

万引き家族のひでやんのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.3
様々な社会問題が盛り込まれていたが、倫理観では割り切れない気持ちが胸に広がり、結局その答えは出ないままだった。

序盤は柴田家の家族構成が今ひとつ分からなかったが、徐々に相関図が見えてきて、奇妙な繋がりで成り立った家族が完成した。松岡茉優が演じた亜紀の関係性がややこしく、その経緯が釈然としなかったが、「さやか」という源氏名でなんとなく納得。親の愛情を独占した妹への当て付けだろう。

嫉妬、虐待、置き去り、DV、それぞれが心に傷を抱えて、引き寄せられるように同気相求。そうやって集まった家は、これ以上傷付かないための避難所。整理された殺風景な部屋ではなく、所狭しと埋め尽くす生活品が、「ずっとここに居てもいいんだよ」と言っているようだ。

生活の困窮が万引きの理由になるが、繋がっているために罪を共有するのが本当の理由に思えた。「ここ」に居るために万引きし、自分も家族である事を伝える。同族安堵なんて言葉はないが、その言葉がしっくりくる。

そんな家族を捉えるカメラは、彼らと同じ目線で食卓を囲み、もう1人の家族となって日常を映し出す。しかし外に出れば世間の目となり、時折引きの画で客観視する。見えない花火を見上げる家族、手を繋いで海辺でジャンプする背中、じゅりを抱きしめる温もり、微笑ましい数々の光景は血の繋がりを超えていく。他の誰も踏み込めない堅固な要塞に思えたが、「いざ」という時に責任などなく、砂上の楼閣となった。

親は伝説の、無責任ヒーロー。

リリー・フランキー、安藤サクラ、2人の子役、俳優陣の演技がとにかく凄かった。演じるというより、それぞれが役の人生を生きていた。
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