Hiroki

万引き家族のHirokiのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.2
今年からカンヌが例年の5月開催に戻ったのでいよいよこの季節がやってきました!
75回目になる本年はオープニングがミシェル・アザナヴィシウスが『カメラを止めるな』をリメイクした『COUPEZ』。(元々はフランスでゾンビを意味する『Z』だったがロシア軍のウクライナ侵攻のシンボル“Z”に重なるという申立てがあり急遽変更。)
コンペは我らが是枝裕和をはじめパルムドール受賞者の『ある子供』のダルデンヌブラザーズ、『4ヶ月、3週と2日』クリスティアン・ムンジウ、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』リューベン・オストルンド。
常連では『あの頃エッフェル塔の下で』アルノー・デプレシャン、『クラッシュ』デヴィッド・クローネンバーグ、『オールド・ボーイ』パク・チャヌク。
初選出組としては『ボーダー 2つの世界』アリ・アッバシ、『Girl/ガール』ルーカス・ドン、そして『ルイ14世の死』のアルベール・セラ。
楽しみすぎるラインナップです。
という事で今年も少し早めからできるだけコンペ監督の過去作品を観て予習していこうと思います!


まず初回はなんといっても今作でパルムドールを受賞してから初めてカンヌに帰ってくる是枝裕和。
是枝さんといえば“家族”を描くスペシャリスト。あの手この手と手を替え品を替え、いろいろな家族の形を描いてきました。
彼の描きたい事の中核というのは“家族の在り方”であり、今作品はある意味でその集大成的な仕上がりとなっています。

具体的には血の繋がりのない集合体が家族たり得るのか?
この作品の秀逸な所が終盤までこの家族が本当に血の繋がりのある家族なのか?それとも赤の他人なのか?を明確にしない所。
そこらへんをポツリポツリと少しずつ明かしていく中で、観客に答えを見つけさせていく。
結局最後は離ればなれになっていくのだけれど、母(安藤サクラ)が刑事(池脇千鶴)に言い放つ「子供を産めば母親になれるのか!」というセリフは非常に強烈。
この家族は決して正しい家族ではなかった。
でもきっと繋がりはあった。
血が繋がっていても本当の意味での繋がりがない家族もたくさんいる。
どっちが大切なのか。今の私にはまだ正解はわからない。
でもやっぱりこの家族と一緒にいた祥太(城桧吏)やりん(佐々木みゆ)は楽しそうだったよ。

そしてなんといってもこの作品の1番の魅力はリリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林の演技合戦。もーこれがとてつもない!
脚本的にはドキュメンタリー出身の是枝さんらしいあまり動きのない淡々と物事が進んでいく作りなのだが、この役者陣が演技でどんどん物語を動かしていく。
さらに1,2シーンのチョイ役なんだけど柄本明とか池松壮亮とか蒔田彩珠とかとても良い。
本当に新旧の日本映画オールスターを集めたみたいな演技合戦。
そして細野晴臣のウェットな音楽もまた素敵。
あとは撮影も非常に良くて、特に隅田川の見えない花火を家族で見上げるカットを上から見下ろす構図がめちゃめちくちゃ素晴らしい。あのカットだけであの人たちの繋がりがグッと感じられた。

今回コンペ作『ベイビー・ブローカー』はいわゆる韓国の赤ちゃんポストの話で、出演が『パラサイト』のソン・ガンホとパルムドールタッグになります。その他は『空気人形』以来のタッグになるペ・ドゥナやカン・ドンウォンが共演。
さらに是枝さん関連でいうと、彼がプロデュースした『十年 Ten Years Japan』というオムニバス映画の一編『PLAN75』(監督:早川千絵)を長編化した映画がある視点部門に出品されるのでこちらも注目!
ちなみに両作品とも日本では6月公開予定です。

是枝さんは今作の後にフランスで『真実』を撮ってその後今回の韓国映画のベイビー・ブローカーを撮るんだけど、実は日本で撮らない理由は樹木希林がいないからなんじゃないかなーとか私は少し思ってます。樹木希林のいない是枝さんの日本映画なんて全く想像できない。
でも今日本で映画撮ってるらしいんですよね。
いやーどんな作品になるのかこちらも待ち遠しい。
でもまずはベイビーブローカー楽しみ!

2022-42
Hiroki

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